角川文庫キャラクター小説大賞

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受賞作品発表/受賞の言葉&選評

2018年9月25日(月)に第4回角川文庫キャラクター小説大賞(主催=株式会社KADOKAWA)の選考会が行われ、選考委員の審査により、下記のように決定いたしました。

受賞作品

大賞(賞金150万円)

『夜は裏返って地獄に片足』大塚已愛(おおつか・いちか)

優秀賞(30万円)

『新米巫女、彩蓮がゆく』ココナッツ

読者賞

『帝都つくもがたり』佐々木匙(ささき・さじ)

選考委員:小路幸也(作家)/高里椎奈(作家)/キャラクター文芸編集部

第4回角川文庫キャラクター小説大賞は、243作品の応募があり、第1次選考(32作品通過)、第2次選考(4作品通過)を経た最終候補の中から、受賞作が決定いたしました。受賞作品は角川文庫より2019年春ごろに刊行予定です。

受賞の言葉

大賞(賞金150万円)

『夜は裏返って地獄に片足』大塚已愛(おおつか・いちか)

《あらすじ》
 十九世紀末、ロンドンの画廊を訪れた外交官の娘・エディスは、新たに発見された名画を「贋作」だと断じる青年と出会う。数日後、エディスが同じ画廊を覗くと、突然その絵から出てきた異形のものに襲われるが、間一髪で青年に救われ……。

 この度は栄えある賞を拝受し、身に余る光栄に背筋が伸びる思いです。

 選考委員の小路先生、高里先生、また編集部の皆様をはじめ、今回の選考に関わり、拙作を読んでいただいた、総ての方に篤く御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

 個人的な意見なのですが、私はキャラクター小説の醍醐味は、その自由度にあると思っています。何に縛られることもなく、どんな世界観であってもかまわない。異世界だろうがSFだろうが、伝奇だろうが恋愛だろうがミステリーだろうが、とにかく何でも書ける、枠組みのない希有なジャンルだと思います。もちろん、レーベルごとの特色はあるかと思うのですが、それでも「何でもあり」という根本的な部分での特徴は変わらないでしょう。

 だから私は、キャラクター小説が大好きです。

 実際、今回受賞された作品を拝見してもわかることですが、何を書いても受け容れてくれるという、角川文庫キャラクター小説大賞の懐の広さは、「作品を書いても何処に出せばいいのかわからない」いわゆる公募難民を受け容れてくれる数少ない賞だと思うのです。このような素晴らしい賞を受賞できたことに、本当に感謝しかありません。

 未熟者ではありますが、受賞の重さを噛みしめつつ、これからますますの精進を以て、少しでも皆様に「面白い」と言っていただけるような作品を作り出せるよう努力していきたいと思います。

 改めて、本当に、ありがとうございました。

優秀賞(30万円)

『新米巫女、彩蓮がゆく』ココナッツ

《あらすじ》
新米巫女の彩蓮は名家の令嬢にもかかわらず、仕事は死体の始末や除霊のような雑用ばかり。ある宦官の死体の処理に向かった先で倒れかけたところを公子・騎遼に助けられ、彼の運命とその謀略に巻き込まれていく――。

 このたびは素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。選考に携わられた関係者の皆様、そして、カクヨムで応援してくださった皆様に心よりお礼を申し上げます。

 私が小説を書くようになったのは、もう十年も前のことですが、自分の読みたいストーリー世界を描きたかったというのが理由でした。小説は、読めば、現実だろうが架空世界だろうが、どこにでも連れて行ってくれ、書けばどこにでも自由に行くことができます。ですから創作をする平凡な四畳半の私の部屋はいつも色で溢れ、魅力ある登場人物で賑やかになっているというわけです。

 今はそれに加え、誰かに共に感じて欲しいと思っています。読書をしていると、時が瞬く間に過ぎて、いつの間にか外が暗くなっていたなどということは、本の虫さんには誰でも経験のあることだと思います。私もそんな物語を書きたいのです。そして私の世界を一緒に旅して喜んでくださる方々と出会いたい。それが私の夢で、そのためにこれからもさらに努力していきたいと思っております。また、この賞をきっかけにさらに多くの方と出会うことに繋がれば、これ以上の幸せはありません。

 最後にもう一度、ありがとうございます。

読者賞(書店員からなるモニター審査員によって、もっとも多く支持された作品に与えられます)

『帝都つくもがたり』佐々木匙(ささき・さじ)

《あらすじ》
昭和初期の帝都・東京。酒浸りで怖がりの文士・大久保と、利に聡い新聞記者・関の二人は怪談を集めていた。脚にしがみつく赤ん坊、誰かに背中を押される川岸、雨宿りをした女が去った後に残る血だまり……。彼らが怪異を求める理由とは。

 このたびは読者賞という大変素晴らしい賞をいただき、とても光栄です。まずは審査に携わられた全ての方に感謝の気持ちをお伝えしたいです。

 また、拙作『帝都つくもがたり』は、元々web小説という形でwebサイト「カクヨム」に掲載し、そこから要項に従って第4回角川文庫キャラクター小説大賞へ応募した作品です。慣れないことも多い中、書き進め、完結させ、受賞に至ることができたのは、これまで読んで下さった方々、感想や反応を下さった方々のおかげだと思っております。何かと不安になりやすい自分をいつも励ましていただき、本当にありがとうございました。頼もしい先輩であったり、目指すべき目標であったり、競い合うライバルであったりする知人友人の皆さん、そして家族にも、嬉しい報告ができ、心からほっとしております。

 『帝都つくもがたり』は昭和初期の東京を舞台に、作家である主人公の視点で進む物語です。当時と現在とでは物質面から精神面まで大きく異なるところが数え切れないほどあります。特に、「物語を届ける」ということについて、原稿用紙に手書きの主人公とスマートフォンで文字を打つ自分(本作はほぼスマホ入力で書きましたが、明らかに疲れるのでおすすめはしません)、媒体も紙の本だけだった頃と、アマチュアでもインターネットを通じて広く発表ができたりする現在とでは状況が全く違います。それでも物語を書きたい、読んでもらいたいという気持ちの核はきっとそれほど変わってはいないだろうと思っています。時代や媒体や発表経路は異なれど、込められた思いの根は同じはずです。

 古い時代の物語と新しい媒体が出合い、そしてご縁がありましてこのような評価をいただきました。非常に楽しくありがたいことです。ここをスタートラインとして、今後もこの縁を大事にしていけたらと気を引き締めていく所存です。

選評

その世界を我が物にするが勝ち 小路幸也

 『夜は裏返って地獄に片足』は、名画に大英帝国に貴族にオートマタにあの世に日本刀に祝詞にとおもしろさのポイントを詰め込み過ぎ、かつ既存名作マンガのイメージを思いっきり彷彿とさせる。換骨奪胎やリスペクトはもちろんあって然るべきだが、そこを超えるものは残念ながら感じられなかった。それでも、そのイメージの重層感溢れる濃密さと、マンガ的でハリウッド的な描き方による書きっぷりにはバランス感覚の良さがあった。端的に言えば〈いいぞもっとやれ〉だ。

 『新米巫女、彩蓮がゆく』は、とにかくテンポが良く、巫女の小娘と武人の髭面大男という〈よくある〉キャラコンビが嫌味なく自然に溶け込み、読み心地が良い。ストーリーに斬新さや新味こそ感じられないが、筆者独特の間合いで多層感がありそれがまたリーダビリティを倍増させている。もっとこのキャラたちの活躍を読みたいと素直に思わせてくれる。

 『ルノワールはプリクラがお好き』は〈絵画説得士〉が〈動いてしまった名画〉の中に入り絵に描かれた人物を〈説得〉するという設定におもしろさは詰まっているものの、リアリティとファンタジーの境界が描き方の曖昧さで霞んでしまい、それによってキャラ設定が邪魔になってしまった感がある。もう少しどちらかに振り切ってしまえば良かった。

 『帝都つくもがたり』は、帝都という舞台に、文士と記者という書き物を仕事とする二人を主人公に持ってきたが、微妙にスタンスが被るその設定が物語をぼやかしてしまった。現れる怪異も特に〈帝都〉という設定にしなくてもいいようなものばかりで、その点もいま一つ物語の魅力として立ち上ってこなかったのが惜しまれる。

第4回角川キャラクター小説大賞によせて 高里椎奈

 『帝都つくもがたり』色々な方が楽しめるお話で、書かれた方が何を好きか、何を書きたいかがストレートに伝わる素直な作品だと思いました。物書きさんと物書きさんがパートナーという組み合わせは珍しいですね。

 『夜は裏返って地獄に片足』読みやすくて面白かったです。時代や設定を細かく書き込もうとする、作品に対する誠意が感じられて素敵でした。反面、ここはもう少し調べてもいいかも……という部分もあったので、より詳細まで情報密度を上げられたら作品のパワーが更に倍増すると思います。

『ルノワールはプリクラがお好き』ふんわりした雰囲気に魅力を感じる作品でした。偶然にも他の応募作と題材に共通してしまった部分が多く、審査という場では不利に働いてしまった感が否めませんでしたので、ご自身の魅力をより伸ばして強化して頂いて、また別の作品を拝読できる機会があれば嬉しいです。

 『新米巫女、彩蓮がゆく』キャラクターとお話がかわいいです。それでいて舞台や展開には骨太の部分があるところが絶妙のバランスだと思います。個人的には馴染みの薄いジャンルでしたが、そんな事はお構いなしに最後まで一気に読ませる筆力に感嘆して、読み終わった時に楽しかったと笑顔になれる作品でした。

 今回、拝読していて感じたのは、文章に対する真摯さは文章に出るという事でした。

 渾身の応募作を読ませて頂いてありがとうございました。