いただきましたモニター当選者の皆様のご感想は、こちらのページ上にて掲載させていただきます。感想を御覧になって、お好みの本を見つけてください。

トロイメライ

■第4回モニター「トロイメライ」池上永一

※いただいた文面から、一部抜粋させていただきました。

とし さん (30代女性 会社員)
 琉球王国の景色、人の動き、料理、それぞれの描写の巧みさで、自然とその物語の世界観に入っていくことができました。連作短編の形式ですが、各話の題材も琉球独特の先祖供養や冊封使が関係したりで、そのためどっぷりと物語の世界にはまることができたのかなと思いました。
 テンペストでは王府内の物語絵巻を、今回は市井で、裕福ではないけれどちゃんと生き抜いている人々のリアルを味わった感じです。庶民の辛さや暗さも描かれていますが、人の強さや優しさも感じさせてくれるので、読後感は前向きな光でした。
 テンペストの登場人物もちらほらと顔を出すので、あぁ、またテンペストも読み直したくなりました。武太・三姉妹・大貫長老・魔加那…、また会いたいです。義賊の正体は・・・?次シリーズを待つ!
micro さん (40代女性 その他)
「テンペスト」は読んだことが無かったので、まずはそちらから読んだほうがいいか迷いながら読み始めました。実際読んでみると「テンペスト」の背景を知らなければ楽しめないという作品ではなく安心しました。
沖縄独特の風土を感じさせる背景の中、人と人との物語、どうにもならない事柄や希望がうまく織り交ぜて描写されており、ドラマを見ているような軽快なストーリー展開でした。主人公を中心に様々な事件や人物が描かれており、その時々で1つ1つの話に集中しながらも、このこと1つ1つがもしかしたら何か大きなものに繋がっているのだろうか?きっと何か展開がありそうな・・・そんなことも感じながら読みました。

一番印象に残った登場人物は「黒マンサージ」です。
その理由は、その正義性にあります。誰なのか謎でありながら、物語を読み進めていくうちに、知らず知らずに、危い場面で「黒マンサージ」の登場を期待しておりました。ヒーロー的存在感があります。
あるぱかじい さん (20代女性 学生)
琉球ノスタルジイ。
幕末の琉球王朝で生活をしたことは当然ないのだが、何か懐かしい。
影のヒーローが何人も、いた。
父母が子供の頃熱中したという、ヒーローを思い起こさせたからかもしれない。 「人生の日常」が、さざなみのようにひそやかに語られている。 それが、武太の三線の調べによって、より一層に心にしみこんでくる。 太陽の光を受けて輝く、びいどろのような連作だった。
misochip さん (10代女性 学生)
幕末という、日本を動乱した時代。日本列島では激しい戦いが行われていたり、志士たちが日本を変えようと命をかけているとき、後に日本となる沖縄・那覇での物語というのはどんなものなんだろう、なんて思って読んでみました。
感じたことは、いつどんな時代でも変わらないもの・・・人には幸せばかりではなく悲しみや辛さもあるということ。逃げたくなる時はどこにいてももどんな人でも必ずある。けれど決して現実から背いたりせず、悲しみや辛さとどうやって向き合っていくべきか、そしてどう乗り越えて成長していくのかを考えさせられました。また、悩んで苦しんで、葛藤しながらも懸命に生きようとする人たちにはとても人間らしさを感じました。
きっとこの本に出てくる少年少女たちは大きく立派に成長して戻ってきてくれるでしょう。また、この本に出会った私もきっと、成長できるような気がしました。
まーさ さん (20代女性 会社員)
毎度毎度はやとちりして長老にお説教くらってキセルでしばかれる主人公って!!!(笑) 感情に素直で思考が一直線な武太が関わる事件は、武太の思うようには解決しなくて、その重
みをかみしめている姿は読んでいても応援したくなります。単純お馬鹿なクセに三線を引かせれば伝説の名人クラスってとこもステキ!
『テンペスト』で活躍していた方々がそこかしこで武太と絡んでくるのもファンとしてはうれしかったです。

「せっかくだけどごめんよ、事件があるんだ」
っていう盛島開鐘を受け取らなかった時のセリフが好きです。
これからの生きていく覚悟、みたいなものを感じました。

池上先生の著作を読んで、琉球王国ってこんな世界だったのか!と凄くイメージが沸きました。これからも、読んでみたいです。
ウエハース さん (10代女性 学生)
予想していたのとは違い、かなり心が温かくなるいい話がそろっていた。シャングリ・ラやレキオスの時とは少し雰囲気が違うなと思いながら読んでいたけど、第五夜からは自由奔放な魔加那が登場してはちゃめちゃになって、そこも面白かった。

池上さんの作品は読めば絶対面白くて、しょっちゅう色々なシーンを思い出します。池上さんの書く人々は強くて個性的で大好きです。またシャングリ・ラみたいにぶあっつい本を書いてください。楽しみにしています。(これはプレッシャーかけている訳ではないのです…)
テンペストがついに文庫化しますね。この貧乏高校生もやっと買うことができます。
シュエパイ さん (20代男性 会社員)
遠い空の向こうの琉球王朝で、異国の太陽と海の香りを吸い込みながら、人々の暮らしを
眺めているような、そんな没頭感に浸りました。
幾つもの罪を犯した人々と、時に寄り添い、時に憤り、時にあきれ、そして時に深く哀しみながら、筑佐事として深く大きく育っていく武太の姿に憧れます。勿論、格好いいばかりじゃなくって、どこまで行っても暴走気味のおっちょこちょいで、長老に引っぱたかれたり、上司に引っぱたかれたり、行きつけの飯屋の娘や町人達にけちょんけちょんにされたり、と、そんな間の抜けた姿とやりとりも大好きです(笑)
筑佐事の腕も、三線の腕も、どこまでも勢いよく疾走しながら成長していく姿を、ずっと見つめていたい作品です。
緋莢 さん (20代男性 その他)
舞台は幕末の琉球王朝。
新米の筑佐事(岡っ引き)の武太が、様々な事件に遭遇しながら成長していく連作短編集。
上からの圧力や、自分の力だけではどうする事も出来ない事にぶつかりながら、武太が悩み、傷つき、それでも己の職務を全うし自分の中の“正義”を信じて進む姿は、読んでいて清々しいです。
 武太の活躍と共に、脇で物語を盛り上げる人々も魅力的です。
裏社会の顔役の大貫長老、料理が評判の「をなり宿」で働く三姉妹
奔放に生きる美貌のジュリ・魔加那などなど。
特に毎回、三姉妹が作る様々な料理の描写が、どれも美味しそうで出てくる度に「食べてみたい!」と思いました。
美しい那覇の風景と、武太が奏でる三線の音色が浮かび上がってくるようでした。
『シャングリ・ラ』や『テンペスト』ほどの派手な展開はありませんが短編で読みやすいので、池上永一を初めて読む人にもお薦めです。『テンペスト』に登場したキャラがチラホラ出てくるのでこの作品読了後に、『テンペスト』を読むのもお薦めです。
すぅ さん (20代女性 会社員)
池上さんの小説は初めてだが、クセのない、読みやすい文体にひきこまれた。19世紀の沖縄という、なじみのない世界なのに、無理なく読み進められた。
自分の信じる正義を貫こうとする主人公に、引っ張られるようにページをめくってしまう。主人公のまっすぐな性格は、もどかしさとともに爽快さも感じる。
難しいことは考えず、するすると読んでいける楽しさ。さわやかな読後感。要所要所で織り込まれる三線(沖縄特有の弦楽器)の歌が、美しく感じられる。
規制の枠から跳びださんとする主人公のやんちゃさと、その彼がかなでる三線の美しさ。そのギャップに惹かれる。
寝るの忘れた!・・と言うほどではないが、確実に読みたい本。
風花 さん (30代女性 会社員)
これです、こういうのが読みたかった!
前作『テンペスト』と同様、19世紀の琉球王国が舞台ですが本作は駆け出しの筑佐事(岡っ引き)・武太を中心にした、ゆるやかな短編集です。
池上氏の狂気的なストーリーや、ジェットコースター的大河ロマンも大好きですが南の国のとろりとした午後にたゆたう三線の響きのようなこんな優しい眼差しの物語を読みたくなる時もあります。
南国の太陽にきらめく”オキナワ・プリズム”的世界の中、個性的な登場人物たちが駆け巡り織りなす絵巻に身をまかせる、至福のひとときを楽しみました。
とはいえ、一見楽園のような世界でも、そこには身分や貧富の格差があり現代と同じ人々の営みがあるという氏の視点は健在です。
他の作品に比べてリアリティのある話運び、人情もの的なアプローチなどかなりとっつきやすく、氏の作品が初めての方にもおすすめです。
『トロイメライ』=「夢想」というタイトルは、ちょっと意外でしたが読んでみると、作品の質感にぴったりでした。前作の『テンペスト』=「嵐」以降、音楽しばりでしょうか?小粋です。
沖縄の豊富な知識に基づく描写は相変わらず圧倒的で、特に音楽や舞をはじめとする芸能や、料理のシーンにコダワリを感じます。沖縄料理が好きな方は、空腹時に読むのは危険かも(笑)
 それにしても主人公・武太、これからどんどんいい男になりそうじゃないですか。ストーリーもこれからもっと面白くなりそうですね、続編、待ってます!
サビラ さん (20代男性 学生)
メインキャラの武太に引っ張られる形で、那覇の街中でゆったりと物語が進んでいく印象。キャラクター間にきつい対立関係もなく、本当にのんびりと読んでいられる作品だと思う。ただ、物語にメリハリが無いわけでは決してなく、むしろ牧歌的な雰囲気の中でこそ切実に浮かび上がってくる清国の大使との関係や、島の周辺部の親に売られる子供たちのエピソードなど、胸を裂くような悲痛な描かれ方がされていない分、同情心や義憤が掻き立てられた。特に第二夜のエピソードは琉球の対清国関係についてだけでなく、現代における沖縄と米兵との関係についても暗示しているようで、著者の憤りを感じた。どこまでも牧歌的に流れていく物語の中に、いくつも散りばめられた著者の琉球、沖縄への思いがするりと入って来る感じ。折々に挿入される武太の三線が物語の適度な間となって、飽きがこない。
一通りこのトロイメライを読んだ後、未読だったテンペストの方も購入して読んでみたが、これは片方読んで面白く、両方読んで王宮側のキャラクターに奥行きが出て震えが来るほど楽しい。謎のキャラクター、黒マンサージの正体ももしや、という影が見えた。


 トロイメライを手にするまで池上永一さんの作品はシャングリ・ラ、レキオスの二作品しか読んでおらず、池上さんの作風を、「練りこまれた壮大なファンタジー」と思っていました。
 しかし、トロイメライは裏にテンペストという練りに練られた濃厚な時代背景と舞台設定が存在していても、あくまでトロイメライはトロイメライとして牧歌的な雰囲気を貫いた作品となっていて、引き出しの広さと琉球、沖縄への幅広く、多面的な思いを作品にくどさを感じさせずに落とし込んでいくテクニックに思わずびっくりしました。アギジャビヨーオオオオッ!
黒猫 さん (40代女性 主婦)
これは、古き良き時代の琉球絵巻です。
身分階級の確立されている中、貧しくとも愉快に日々を送っている人々。
琉球音楽,唄,踊り,恋,食べ物。海運商業で成り立っているこの浮島には異国ではないが、異国情緒あふれる世界が広がる。
当然、そこに登場する者たちも、一癖二癖もある個性的な人物ばかり。
三線弾きの筑佐事の武太をはじめ、涅槃院の大貫長老,「をなり宿」の部分
美人三姉妹,ジュリの魔加那など厳しくもあり、悲しくもあるこの現実をしっかり受け止め、必死
に自分の生き方を見出していく姿に、なんともいえない切なさを感じる。だからといって、悲劇ではないところがいいですね。
琉球人の逞しさから、パワーをいただきました。

第六夜 唄の浜
墓所のないサチオバァをガマに葬るしかないと知った武太が、大貫長老に願い出る場面。
「形だけでもいいから、どこかの墓の片隅でもいいから、サチオバァの墓所を作ってくれないか。頼む。頼みます。住職様!」
いつもは、“爺ィ”と呼んでいる武太が、初めて「住職様」と言った。自分の為ではなく、人の為に必死に頭をさげる姿に、思わず涙がこぼれた。

「テンペスト」もそうでしたが、琉球王朝期の世界を書かせたら、池上先生を超える作家先生は、いないですね。ストーリーに無理が無く、それでいてテーマは深い。
あらゆる場面での描写(人々の生活,服装,言語,習慣,文化 等)が丁寧であり、それでいて必要最小限度の説明なので分かりやすいです。
なぎさ さん (20代女性 学生)
全体的な感想としては、前作「テンペスト」の非現実さや耽美さと打って変わって、今作「トロイメライ」は等身大の庶民達が目の前のことを精一杯生きる、てんやわんやな物語という印象を受けた。様々な登場人物にスポットライトを当てているので、共感出来る登場人物が必ず一人見つかるような構成になっていると思った。
しかし、どちらかというと「テンペスト」の番外編というカラーが強いと思った。「テンペスト」の登場人物の新たな一面が見れるので楽しいが、初めて読む人にとっては面白さが半減する気がした。
pazu さん (40代男性 会社員)
「トロイメライ」では、舞台が前作「テンペスト」の王宮から庶民の街那覇にシフトされており、人の心のふれあいやつながりが池上流に描かれていて、最後までおもしろく読むことができました。
主人公の新米筑佐事(本土でいう岡っ引き?)武太の危なっかしかった言動が、さまざまな事件や人々との出会いの中でたくましい男のそれに変化していく様は読んでいて気持ちのよいものでした。
主人公の武太を始めとして、武太の天敵と同時に指導者大貫長老、料理に命をかける鍋,竃,甕三姉妹、謎の正義の味方・黒マンサージなどキャラが超魅力的!それに「テンペスト」からゲストキャラがてんこ盛りに出演してくれてるのもファンには嬉しくて涙モノです。一話完結の連作集なので、ディープな池上ファンだけでなく池上作品未経験者にもオススメします。きっと別の作品も読みたくなるハズ!
アキラ さん (20代女性 学生)
短編形式のお話が六話、どれもこれもお話の最後必ず涙ぐんでしまいました!最初数ページは慣れない沖縄言葉に少し戸惑ってしまいましたが、すぐ自分の中に浸透していきました。
何といっても登場人物たちの魅力といったら!!彼ら、彼女らの何が惹きつけるというと、その人間臭さです。
笑ったり、泣いたり、読んでいる自分まで一緒にその感情をその場で共有してるような錯覚を起こしてしまう。物語の多くはそういうものですが、この話はまた一風違い、深くこの感覚を共有させてくれたのです!それが武太というおちゃめでまっすぐな青年の心意気。お話が進むにつれ、感情はどんどん武太とシンクロしていき、最後には何度涙をぬぐいながらページをめくったことか!
それでも悲しいじゃない気持ちなんです。涙の訳は。いっぱい書きたい感想があるのにうまく言い表せないのが歯がゆいです!
また、黒マンサージの現れたときは、出会った女の子たちの気持ち!黒マンサージ様!と叫んでしまいそう!彼の謎が残ったままでしたので、続編、期待しちゃっていいんですかね?謎は謎のまま……っていうのも魅力的なんですが気になります(笑)

最後に読んだ部分というのもありますが、サチオバァがどれだけ皆に慕われていたか、そして、どれだけ皆に愛情を注いでいたか、それが本当に伝わるラストでした!
読んでる最中、袖で涙をぬぐいながら笑っているという変な顔をしていたくらい!一緒にサチオバァを見送っていたラスト、一番印象に残っています。
それとはまた別ですが、もうひとつ。釵を受け取れないと言った武太に対しての中取の言葉。
「もしおまえが初手柄に浮かれるような輩なら、釵を渡さなかった。使い方を間違えれば日本刀以上に殺傷力がある武器だ。慎重な者こそ所持するのに相応しい」
「おまえは釵と三線を使いこなし築佐事になれ!」
なんて粋な方だろうと思いました。
武太が断った事の気持ちも何もかもわかった上で、この言葉。
ついていくに値する上司。この方が上司なら、武太はいい築佐事になっていける!そう思えた言葉でした。
タロ犬 さん (20代男性 その他)
空気まで伝わりそうなほど活き活きと描写される那覇の人々。そんななかで起こる事件を新米筑佐事の武太と一緒に体験していく気分でした。
起こる事件のなかで触れる人情味溢れる人々の人間模様がとても心地良い。しかし人々の明るさとユーモア溢れる文体(これこそ池上永一!)の影で、法と情の葛藤、世の中の不条理さ、ままならなさもまた確かに描かれています。それをしっかりと書きながら、しかし明るく楽しく読めるのがこの作品の大きな魅力だと思いまます。
また出てくる沖縄料理がどれも美味そうで、読んでる最中は腹が減って困りました。僕も武太の三線を聴きながら部分美人三姉妹の料理に舌鼓をうちたいです。
ともかく、魅力的な登場人物と軽妙な語り口、存分に池上永一分を補給できました。満足です。

好きな人物として、主人公の武太を。意外としっかりしていて。
池上作品に登場する男はどうも女に比べて頼りない印象だったんですが、武太は自分なりに出来ることをやろうとしてて、読んでて好感がもてました。行動力あるじゃん、みたいな。ちょっと短絡的ですが。
はじめは、どっちかというとダメな奴として描かれていたのに、物語が進むごとにきっちり成長していて、努力して字も読めるようになってて「コイツやるなぁ」と素直に感心ですよ。
小日向蛟龍 さん (40代男性 会社員)
池上永一さんの作品の楽しみといえば、やはり生き生きとした人物描写だと思う。私は「テンペスト」の聞得大君、徐丁垓、「シャングリ・ラ」の涼子やミーコ、などが特にお気に入りだ。魅力的な人物はたくさん描かれるが、特に敵役の強烈なキャラが際立っていて引きこまれる。
 今作品にもそんな個性的な人物がたくさん登場する。
まず、涅槃院の住職、大貫長老。彼の周りには犯罪者や犯罪者予備軍も集まり、人情にも篤い。作品の中でも重要な位置を占めている。人格者かとも思われる反面、『お前が憎い!お前が憎い!お前が憎い!』と容赦なく武太を打ち付ける様は、狂気ですらある。また、ジュリの魔加那。あまりに美しく、妖しい。その素性は驚くべきものである。
テンペストの登場人物がしばしば顔を見せてくれるのも、懐かしくそして楽しい。
特に真美那。テンペストで御内原にあがった孫寧温の友達となり彼女を助けたお嬢様爆弾のルーツを見た思いがしたのもとても貴重な体験だ。
そして、主人公の筑佐事の武太。本書は新米の筑佐事の武太が法の番人として、正義とは何かを苦悶しながら成長していく物語である。
武太は筑佐事として法の番人であろうとする。しかし、そのことが必ずしも庶民にとって情けのある結論とはならない。本当の正義とはなにか。今までも多くの物語などで、取り上げられてきたテーマであると思うが、本作品では、武太の無教養で無鉄砲、そして人情厚いキャラが、とてもいい効果を出していると思う。また武太が三線の名人級の腕前を持っているという設定がまたいい。三線を弾きながら歌うシーンがまたすばらしい効果を出している。
武太との対比で考えさせられるのが、黒マンサージの男。彼は自ら正義と考える行動をなんのためらいもなく実行に移す。しかし当然のことながらそれは法の許す行為ではない。
法の番人でありながら、本当の正義に悩む男。自らの正義を実現する実行力がありながら、法の遵守者ではない男。この二人の男の対比、どちらがどう正しいというわけでもなく、決着もつけられないが、本当の正義とはをめぐって、いつかは対決する日がくるのではないだろうか。
 全編にテンペストの雰囲気を漂わせつつ、またそれとは一味違った人情味溢れるストーリーで一気に読ませて頂いた。本作も秀作であると同時に、再びテンペストを読み返して見たいと思わせる作品だ。
あや さん (40代女性 自営業)
12才の時、初めて沖縄を訪れました。
ハイビスカス、スコール、極彩色の首里城。
その琉球の印象を増幅して、ポップアップ絵本のように、人と音楽とアクションが飛び交うエンターテイメント作品でした。
 19世紀の琉球は、知っているようで知らないことばかり。それでいて、ジーマミー豆腐、シークヮーサー…沖縄独特の、ぎゅっと濃い味と香りが私達を刺激してきます。寺なのになんでもありの涅槃院の大長老・料理三姉妹・黒マンサージ・姫君…謎の人物が次々出てきます。
 アンデルセン童話のような、人の善意が組み合わさっていくラストも、おもちゃ箱をひっくり返した豊かさで、カラフルな舞台劇の楽しさでした。

私も三味線をやっているので、三線の天才・武太に惹かれました。
名手は楽器を選ばない、と言いますが、紙で張った楽器の音色さえ、琉球一の名器の音にしてしまう天才ぶりは、ファンタジーを感じます。
一方で岡っ引きである武太の正義感が、終幕である人物への恋心に変わるあたりも意外性に富んでいました。
朱音 さん (40代女性 主婦)
身分も金も権力もなく貧しい日々だが、いきいきと生きている武太や三姉妹たち。住職・大貫長老がまたとぼけたいい味をだしていると思いました。
最初はただ手柄を立て、出世して皆に褒められたいと思っていた少年が人情の機微を知り成長してゆく、それが周囲を明るくしている…南国の空の下、明るいだけでなくその底になにか切ないようなものを感じました。
挿入される料理や歌、風景の描写に潮の香りさえしてくるようでした。

武太の純でまっすぐなところに惹かれました。学も金もなく、できることと言えば三線を弾いて歌うこと。そんな少年が筑佐事として成長し、手柄を立てることだけを目当てにするのでなく人のための情のある青年になってゆく、そこがとてもいいと思いました。

三線の精かと思われる女形が武太に盛島開鐘を渡したのに「ワンはまだ未熟だ」と返した場面。音楽や三線に対する欲よりも、人生における成長を選んだことで、彼の三線の音色にももっと深みが出てくることを期待します。

時代物として琉球が舞台のものは馴染がなく、最初はとっつきにくかったが次第に物語に引き込まれていきました。池上氏の本は初めてでした、前作「テンペスト」他、読みたい本が又増えました。
ごっつ さん (20代男性 学生)
正直このような小説を読んだことがなかったので、最初は沖縄弁がかなり強烈でした。ただ、その分インパクトも強く、当時のきぶんになることができました。
筑佐事になった武太は本当に素直で、正義感が強く、呼んでいてかわいい存在でした。一夜進むごとに成長する武太を読むのが楽しくて、あっという間に読んでしまいました。
私にとってはかなり新感覚の本でしたが、おすすめです。

第三夜が特に好きで、血はつながっていなくとも、本当の親子のようでした。よきお兄さんのような立場にいた虎寿には本当に心を動かされました。
それぞれが違う道を歩んでいく。でも心はつながっているよ、そんな温かい気持ちが伝わってきたのと、武太のなにもできないくやしさがおり交ったようなそんな第三夜が一番好きです。
九竜 さん (20代女性 会社員)
『テンペスト』が一時代が終わりを告げるまでの、波乱万丈な、一気呵成のジェットコースター的な物語としたら、『トロイメライ』はいつまでもゆっくりと、繰り返し回っていそうなメリーゴーランドのような物語でした。
 やるせないことがあっても三線の音色に溶かされて、読み終わった後には、なんとなく宵の海を眺めているような、そんな気持ちが残りました。
 あと、なんと言っても、描写されるごはんの美味しそうなこと! ごはんの美味しそうな小説はいい小説、と個人的に思っているのですが、食べたくても再現の難度の高い料理が多いのがまた小憎らしい。
コウ さん (30代女性 専門職)
初めての池上永一作品。琉球王国を舞台に、市井の人びとの目線で語られる物語は、あたたかみがあり、全体を通して大変読みやすかった。築佐事の武太、涅槃院の大貫長老、「をなり宿」の三姉妹など、登場人物も魅力的でよく練られている印象。章を重ねるごとに面白みが増していくように感じた。

「第三夜 イベガマの祈り」が、作品中もっとも面白かった。貧しさゆえに奉公に出される虎寿・美戸・多根という同じ年の三人の子どもたちの行動・セリフは胸を打つ。もう二度と重ならないかもしれない運命の糸。それを知りつつ、前向きにそれぞれの人生に立ち向かっていく別れの場面が印象的。
cherry さん (20代女性 会社員)
本作品は筑佐事になりたての武太が、様々な人たちと出会い事件と遭遇し、その中で成長していく様を、沖縄の料理と文化、唄にのせて書いた連作集である。
物語ののっけから那覇の描写、独特の言葉と唄が出てくる。私は沖縄の歴史や文化には詳しくないので、正直最初は戸惑ったが、魅力的な登場人物やテンポのいいストーリー展開、シリアスさとコメディの絶妙のバランスによってすぐに話しに引き込まれた。一つ一つの作品もそうだが、沖縄の情景が浮かんでくるような描写や太陽の明るさを反映しているような人々、散りばめられた料理や唄によって、その雰囲気そのものが非常に楽しめる作品であった。
ただ惜しむべきは、私があまりにも沖縄文化に馴染みがなかったことである。事前に琉球の歴史や文化を知っている人ならば、もっと楽しめたかと思う。

私が一番好きな登場人物は魔加那である。彼女は良家の生まれにも関わらず、ジュリとなる。男を虜にする美貌と彼らを翻弄する魅力を持って、だが得たお金を売られた子供を買い戻すために使うのである。その美しさ、豪胆さ、たくましさとそして強靭でありながらもたおやかな優しさに惹かれた。物語の最後で彼女は恋をする。きっと真っ直ぐに愛する人を見るだろうに違いない彼女を思い、私は一人好意的な笑みを浮かべるのである。

私が最も印象的に残った場面は、魔加那が大貫のところに、売られた子供たちの身請口入証文を買い取りに行くところである。お金をどっさり積み上げる彼女に、大貫は彼女がやっていることは所詮無駄で、貧しい人がいる限り子供たちはまた売られると言う。それに対して魔加那は「じゃあまた買い取るだけよ(中略)だって最後には必ず私が勝つと決まっているもの」と答えるのである。なんという強さとたくましさ、そして未来を信じる明るさなのだろうと思い、私は非常に感じ入った。この台詞は彼女の考え方であると共に本作品に書き表してある沖縄の雰囲気、沖縄に住まう人々たちの矜持そのものにように私には思われた。尊く、貴重な心構えである。
クキクマ さん (10代男性 学生)
次第に吸い込まれていくような作品でした。主人公、武太の心の成長、周りの反応、そして人は変わっていく。
読み始めの僕は、まだ琉球に着いたばかりの異邦人でした。けれども、琉球文化にふれていくと、なあんだ、普通の人たちなんだな、と感じました。自分が今まで琉球人をはるか遠い宇宙のように、一歩引いて離れて眺めていたんだな、と。
どんな国でも、人情っていいものですね。
REX さん ()
時は江戸時代、場所は琉球王国…。そんな見たことも考えたこともない世界がまるで目の前に広がっているようで、読むたびにその時代に自分がタイムスリップできるような感覚で読むのがすごく楽しみでした。今とは常識も人々の暮らしも全然違うのに、人情味あふれる人たちがいて心情の動きはやはり今と同じ。短編小説のように1事件1事件区切られているのも、子育て中でなかなかまとまった時間がとれない私にも読みやすかったです。テレビドラマ化したら人気が出るのではないかと思いました。見習い築佐事(今の警官)でおっちょこちょいのお調子者の主人公は佐藤隆太さんにやってほしいなぁ。
あっくん さん (30代女性 専門職)
愛すべきだめんずを中心に、作者の暖かいまなざしのこもったキャラたちが織り成すザお約束的ワールド!
でもそれってば、ぜんぜん嫌な予定調和でなくって、むしろ安心して次が読める水戸黄門的というかサザエさん的とでも言いましょうか。
ストーリー自体は、さりげないのに、わくわくして読めるのはやはり作者の沖縄への深い敬愛と描写に他ならない。タイムスリップした琉球王国の太陽の眩しさとご飯の匂いとそして武太の三線の音色とが織り成す魅力は新しい古典!次世代の池波正太郎と言ったら言い過ぎ?
ファイブ さん (50代女性 その他)
総天然色の活劇写真の早送りのイメージ。
テンポの速さ、内容の飛びぬけた明るさ、すべてが琉球の息づかいをあらわし
そして何もかもが三線の音色に帰す。

泊高橋になんぢゃじふぁ落とち
  いつか夜の明けてとめてぃさすら
       女の誇り、女の涙、女の吐息何もかもひっくるめて簪を
     落としたと詠んだ魔加那。でもちょっとだけ。明日からはまた強く
     気高くそして好奇心前面に情熱の女は行く。拍手喝采。
       いつの時代も女は強し。