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お初の繭

■第6回モニター「お初の繭」一路晃司

※いただいた文面から、一部抜粋させていただきました。

りこ さん (30代女性 主婦)
 ホラーと言うには異色。しかしホラー以外の何物でもない。そんな恐ろしさが体験できる物語でした。否、恐ろしさよりもおぞましさと言った方がしっくりくるかもしれません。
 舞台は明治の製糸工場。お国に錦を飾らんと健気に奉公に出る、貧乏な地域に生まれた若い娘たちが主役です。慣れぬ奉公先での初っ端からの辱めとも言えるような身体検査。それにより判定を下され、不可解な格付けをされるお初たち。まだいたいけさの残る少女たちに圧し掛かる初めての社会での“闇”、そこへ丁度良いタイミングで与えられる甘美な施し。このいたる所に散りばめられた謎や、絶妙な飴と鞭のバランスが読み手側をいい意味でヤキモキさせます。
 後半の怒涛の展開は凄まじいです。時間を忘れて一気に読み進めてしまった…!衝撃のラストとはこの事。救いようがない、逃げられない、助けて!様々な感情に襲われながら気がつけば自分がお初になった様な錯覚に陥り、思わず身を乗り出す勢いで読み進めてました。
 こんなにも生々しく温度と空気の湿りや臭いを感じる小説は初めてだったので、読み終えた後はそのリアリティな体感に思わず口を漱いだほど。
 最後の一文を読み終え、本を閉じ…。そこで目に入った「お初の繭」という題名に「ああ!なるほど!」と思わず感嘆の声を上げてしまいました。
 最後に。そんなおぞましさの中、救いだと思ったのはキャラクターや土地などの名称でした。言葉遊びのそれに思わずニヤリ。
 隅々まで手抜きのない、本当に良い作品だと思います。ああ、おぞましかったー!!恐かったー!!
あられ さん (40代女性 主婦)
 生命力溢れる少女たちと対照的な重苦しい湿度の高い村の工場のなかで少しずつ日常がずれてゆく感覚が本をおくことを許さなかった。なにかおかしい、もしかして、もしかして、いやそんなはずはない。曾祖母が少女の頃のお話なのになぜか現代にも通ずる気がする。まさかそんなことが!衝撃的な事実を知ってももしかして救いの手がお初にのびるかも・・・と祈るような気持ちで読み進めた。
 静寂なる残酷なラストにしばらく動けず息をひそめていた・・・・。
愛矢子 さん (30代女性 その他)
 次はどうなるのか・・それで結末はどうなるのか・・まさかそんな・・えっ!?・・・そうだったのか・・・・・・と、読むのをやめられず、あっという間に読み終わってしまった。独特の語り口調や、登場人物達の方言も雰囲気を出している。
 少女達の体温や部屋の温度、工場の臭いまでリアルに感じられるようだった。少女・・まだ初潮も迎えておらず、もちろん男も知らない、それどころか恋すら知らない少女というのは、美しく無垢な反面、なぜか独特の色がついている。集団ともなればもっとかもしれない。本人達はまったく意識していないけれど、どこかエロティック。いや、意識していないからこそだと思う。そんな少女たちが作る糸はなんと美しいことだろう・・と怖さも忘れて想像してしまう。そんな自分もじゅうぶん変態の要素があるのかもしれない・・・。
 とにかく、途中までは少女達に感情移入していたはずが、なぜか途中から蛾冶助や若旦那、フルチンスキー(名前がおもしろすぎる)の立場になって読んでいることに気付く、不思議な小説だった。
 すべての事情を少女達の親までもが知っているというのは衝撃だ。製糸部の糸繰り工女達と、救われない結末は悲しいというか、工女達が哀れで怖い。
 好きな登場人物は蛾冶助。きっとこの人が裏でいろいろ動かしているんだろう・・とは思っていたが、優しい物腰と変態部分のコントラストが気味悪い。
ハピ さん (40代女性 主婦)
 読み始めから、どんどん話に引き込まれて、この先の恐怖を想像しながら一気に読んでしまいました。
 少女たちは、製糸会社に売られたけれど、その中の養蚕部の工女たちは死ぬまで何も知らず、きれいな宿舎と美味しい食事をお腹いっぱい食べることができて幸せだったかもしれない。けれど、お初は全てを知ってしまいものすごい恐怖を感じながら逃げられずかわいそうだった。
 若旦那の養蚕小屋でのおぞましい姿と、お初が逃げた工場内の工女の働く姿がいつまでも思い出される。・・・・・・恐ろしい。
 好きな登場人物はお千代。初めは、嫌なことを言う子だったけれど、本当はやさしく情があり、お清と違って人間らしい。
びびぃ さん (30代女性 主婦)
 全体的な世界観がとてもよかったです。文体も読みやすいので一気に読めました。読み初めは童話のような雰囲気で始まりますが、読み終えた後の余韻は間違いなくホラーです。
 主人公のお初が直面する辛い現実は痛々しく、お初の倍以上の年齢の私は、お初の感じない恐怖まで感じなければならず、どんどん読み進めてしまいます。
 読み手の年齢や性別によって、全く違う恐怖があるのも本書の魅力のひとつだと感じました。
 好きな登場人物はお清。辛い現実に直面しても、強く生き抜こうとするところに人間の本質のようなものを感じました。今まで愛し信じてきたもの全てが覆り、それでも生き抜こうと決めたとき、どれほどの辛い選択をしなくてはならなかったか、人の心を捨ててまで生きると決めさせた現実に対する絶望感は計り知れないと思います。
 好きなシーンは、製糸部適性検査の終了時、お清のすがる視線とそれを避けるお初の場面です。おトラちゃんとお千代の庇い合いとの対比が印象的でした。読み終えた後におなかにズンと来る後味の余韻を残す原因の場面です。
おけい さん (40代女性 主婦)
 読み終えてまず、エゲツナイと口からこぼれた……。前半の少女たちの生き生きとした様子に対し、後半の気持ち悪さと妙な軽々しさは何なのだろう…?
 怖いのは人の欲深さ。そしてそれを知りながらも諦めて綿々と繋がれて受け継がれている事に遣りきれない思いがする。少女たちの哀しい歌の陰にあるのは欲という魔物だった
淑淑シュン さん (10代男性 学生)
 前半は町のしきたりや雰囲気を興味深く理解していきました。ちょっとずつ異様さがにじみでているところから、後半の妖しさが一気に噴出したところまでで「ここまできたら途中で読み終わりたくない」「最後まで読みとおしたいなあ」という気持ちが生まれました。それと同時に高鳴る心臓の感覚は心地いいものがありました。
 生きていれば人間の汚い部分はいくらでもかいま見えますが、『お初の繭』にはそこから生じる人間の恐ろしさが多くありました。また、このひとの書く人間を読んでみたく思いました。
お千代は気の強い、人を仕切りたがる少女ですが、情に厚く人の不幸を悲しめる人柄に共感を覚えました。
pomu さん (40代女性 主婦)
 お初が奉公にでる製糸工場は最初からおかしい。怪しい。大人たちは相当の変態だし、ラストは酷くグロテスクな地獄絵図でしたが、お初の心はある意味最後までけがれる事はなかったと思っています。繰り糸枠に巻き取られる引き立ての生糸のようにきれいなまま。しかし、蝶になって舞うことも、蛾にさえなることもなく、「繭」のまま…。
 好きな登場人物はお初。厳しく、様々な疑問もわく中で、最初から覚悟を決めている彼女は受け止め方がとても前向き。凛々しく生きているところが好きです。
自分も彼女たちとともに製糸工場に奉公にでる12歳の娘のような気持ちで読んでいましたが、暗く重い話であるにもかかわらず、お初ちゃんと一緒だったので前を向いた強い気持ちで読み進めることができました。
真智子 さん (40代女性 会社員)
 「身の毛もよだつ」という言葉がぴったりの作品であった。
最初は、貧しい家に生まれた「お初」が身売り同然で奉公に出され、その先で様々な困難に出会うといった、「ああ野麦峠」を思わせる内容だったが、中盤からは異質な出来事が徐々に明らかになり、ラストは恐怖と哀れさにやられてしまった。
 フィクションだと思いつつも、時代背景はあり得そうな状況であり、また繭を作る蛾についても「世界は広し。どこかに存在するかも。」という錯覚に陥ってしまう。その思いがよりこの物語の怖さを増長している。
 私は完全に作者も思う壺にはまってしまい、読み終えた日の夜は「眠れぬ夜」を過ごす事になった。
 好きな登場人物はお初。ストーリーの中でも精神的に成長していく様(友達を思いやったり、淡い恋心を抱いたり)が描かれていて、ホラー作品の中でも唯一癒される部分だったような気がします。
ちいぼう さん (40代女性 その他)
 読み終えた時、私の中に繭が生まれ、その繭の中で女工たちの抱いた辛さが、悲しみが、恐怖がうごめいているような気がします。
好きな登場人物はお初。少女の抱いた想いや気持ちがそのまま伝わってきて、幼かったころの自分を思い出させてくれました。
 好きなシーンは、こん畜生! こん畜生! と、お初が、むきになってどんどん石を放るところ。
友達に対して、何もしてあげられなかったお初の悔しさやせつなさが迫ってきます。
 この本を読み終えた時、心に残るものがあります。心の中でうごめくものがあります。この不快感を抱かないでいられる人が、はたしているでしょうか。
Y子 さん (30代女性 会社員)
 純真無垢な里山の少女・お初が、奉公先で家族や友人のために奮起したり心を痛めたりする情景が浮かび、読み進めながら いつの間にかお初を応援している自分がいました。理性を保って果敢に現実と向き合い、大人の事情を必死に理解しようとするお初が困難に直面するたび、本の中に入ってお初を抱きしめてあげたくなりました。自分が大人になった今、何も疑わずにすべての大人の言うことを信じてしまう子供の立場に立って言葉を選ばなくてはいけないと思いました。
 好きな登場人物はお初。少女の純真な心を持っていて天真爛漫なところが好きです。大人に対する懐疑心を抱きながらも、常に持ち前の明るさや好奇心を原動力にして行動するところが健気で涙を誘います。どんなに辛く悲しいときも、真っ向から人を疑うことをせず、人の良いところを重視して人間性を見極められ、その大人顔負けのプラス思考に終始感心していました。
 好きなシーンは、お初が若旦那さんの後を追って製糸所に忍び入る場面。常に誰かの監視下に置かれている日々の中で、若旦那さんの体の心配と同郷の友人のためという正義感だけで危険に立ち向かい、勇気を振り絞って真実を追い求める少女の姿が目に浮かびました。
衿子 さん (30代女性 会社員)
 不気味さからくる怖さを好む人に勧めたい小説でした。
 おとぎ話のような文章と情景描写が、生々しく恐ろしい物語をいびつでより醜くデフォルメするようで、読んでいてなんとも薄気味悪く、面白かったです。12歳のあどけなさが残る少女が製糸工場に奉公に出るという設定もまた、不安感にかられ、心惹かれました。
 恐怖ばかりで語られてゆかず、合間に挿入される軽い笑いを含んだシーンが読みやすくもあり、物語全体に漂う気味の悪い恐ろしさをより増しているように感じました。
 一緒に工場に入りながらも途中で分かたれ次第に様子が変わっていく少女や謎めいた工場側の大人たちなど、先の読めないミステリーっぽい味付けがされていて、最後まで一気に読んでしまいました!リアルさからくる恐ろしさも好きですが、この小説の半分作り物めいた雰囲気からくる気持ちの悪さや恐ろしさも好きです。
 好きな登場人物は若旦那です。彼が出てくるシーンや話す事が謎めいていたり気持ちが悪かったりで、面白く読ませていただきました。
さくまま さん (30代女性 主婦)
 恐怖!戦慄!慄然!凄惨!
 私の貧困な語彙では表現しきれない世界観を持った作品です。
 閉塞的で圧迫感のある舞台設定なのに、登場人物たちの動きが不自然でなく、自然と頭の中に映像が浮かんできました。が、作品が映像化してしまったが故に増していく恐怖!読後しばらく、自分の腕に現れる鳥肌と、背筋を這い回る異様な感覚に悩まされました。
 蛾治助の、「わしの養蚕の技から生まれたおぼこ糸が人心を魅了しているかと思うと、嬉しくて背筋がゾクゾクするほどさ」というセリフが好きです。読後、蛾治助の狂気に支配された頭の内をもっとも良く表現していたセリフだと思い出しました。乞食同然だったころの蛾治助をあざけったであろう世間の人々に対して、知らないとはいえ犯罪に荷担させているのだという暗い喜びを如実に表しているような気がしました。
Nao さん (40代女性 会社員)
 読み始めは「です・ます調」の語り口と、「誰目線で話がすすんでるの?」という感じでちょっとまどろっこしい感じもありましたが、中盤からは物語に入り込み気にならなくなり、一気に読み終えてしまいした。
 芋虫系が大嫌いな私は、後半かなり旋律致しました・・・想像しただけで恐ろしい・・・物語の異様さとは裏腹に、登場人物達の牧歌的な感じが何とも表現し難い作品でした。
batako-sun さん (20代女性 学生)
直接的な表現にするとグロテスクなのに、お初のような少女の視点から読むと、なぜか清麗さを感じました。
 読み終わったとき、これは実話だろうか?と疑ってしまいました。それほど時代と背景の考証がされていましたし、難しい表現がなく、頭にするっと入ってくるのでそう感じたのでしょう。
 製糸場とその仕事、お初ら工女同士の関わり合いが多く書かれているけれど、少しずつ募る疑念と不穏な雰囲気に呑まれ、どんどん読み進めていってしまいました。
ラストですべての謎が明かされ、工女の唄の意味も全てが明らかとなり、「ああ、そういう意味だったのか」と感心しました。
 好きな登場人物はお千代。つんけんした生意気少女、というのが最初の印象でした。読み進めて行くうちに、おトラの世話をしていたり、仲の良くなかったお初との接し方に優しさが感じられた。お初が倒れたときもすぐに駆け寄って介抱したとき、このお千代は本当に「いいお姉さん」だと思いました。この作品の中で誰よりも強く、想いを通した彼女に一番好感を抱きました。
alice さん (30代女性 公務員)
 舞台は、貧しさから口減らしのために娘を奉公に出していた頃の日本。
 主人公である12歳の少女寄りの視点から「です・ます」調の丁寧な文体で綴られていく、奉公先である製糸工場での日々。それは、貧しい故郷の村とは180度違う生活。まるで、児童向けの作品を読んでいるかのような気持ちで読み進めていくと、後半で全く様変わりする。
 1点の染みが、どんどんと広がり、あっという間に呑み込まれる。それは、主人公のお初だけではなく、読み手である私さえも・・・
 お初の感じる恐怖や気持ち悪さがリアルに伝わってきて、気持ち悪くてぞくぞくするのにもかかわらず、読むのをやめられなかった。
 読後、可哀相な少女たちに同情するよりも先に、おぞましさが湧いてきた。
 この内容にあんなにも綺麗な装丁。本そのものが、内容を表していると思った。
 好きな登場人物はお千代。あんな状況になっても、最後まで一番、普通の人間だったから。
きくちゃん さん (20代女性 その他)
 冒頭から、これはおもしろくなりそうだなという予感。主人公のお初は十二で、遠い製糸工場へ仲間と共に働きに出るのですが、親のために子供は働き奉公することが当たり前の時代。お初も他の子供たちも、現代では比較にならないくらい逞しい。
 嵐の前の静けさ。過酷な労働が待っていると誰もが思っていた製糸工場では、予想を裏切る上げ膳据え膳の賑やかで贅沢な毎日。この後に一体何が待ち受けているのか、読み進めながらドキドキしました。
 工場で指導をする、二人の男。相撲取りのような男と、青白い顔の男。正反対の二人がこの物語の行方を物語っているような、その男たちの息遣いさえ伝わってくるようで、ゾッとしました。
 お初達子供が光だとすると、大人達は闇。自分の意思ではどうにもならないもどかしさが残りましたが、これはホラーが苦手な方でも読めるのでぜひ読んでみてほしい作品です。
 お清がお初に言ったセリフが好きです。
 「おらは、残飯を食いながら、蛹を食いながら、心に誓っただ。世の中には信用できる奴がいねえなら、人の心なんて捨ててしまえってな。そうすりゃ、辛えことなんかなくなる。・・・お峰姉さんみたいに弱い人間にはならねえ」
 あんなに情の深かったお清を180度変えてしまった製糸工場。子供が一瞬で大人になったような絶望的な場面でした。
ビンママ さん (40代女性 その他)
 ホラー物は、滅多に読まない読まない私。正直「読みきれるか」と言う不安を抱えつつ表紙をめくった。目に飛び込んできた「瓜生(フリーク)=変人」という物語の舞台となる工場名、これから起こる何かを期待させるには十分な始まりだった。
 一気に読み終えた後、一人でいるのが怖くて、布団にもぐった。最後の「お初」のシーンがまぶたの裏に焼きついたままで、何度もナマナマしく蘇ってきた。
 ちょっと非日常的な体験をしたいあなたには、お勧めの本です。でもあなたの背後で羽音がするたび、山繭蛾では?と身をこわばらせることになるかもしれませんが。。。。
 好きな登場人物はお千代=登場した時は、気の強い女の子だと思ったが、その後妹を亡くしたことから、いじめられっ子のとらちゃんをかばうところなど、この本の平常心にかけた登場人物郡の中では、唯一ほっとする存在であった、と思う。
ねこうなぎ さん (30代男性 会社員)
 痛々しいほどの工女の純粋さと、それを利用する大人の生々しい描写が恐怖を誘います。読み進めるにつれ、その純粋さと恐怖のギャップが増して行き、先に起こるであろう何かに期待が膨らみます。その期待感と、情景の移り変わりのテンポがとても良く、一気に読み終えてしまいました。読み終えた後に、ホラー映画を見た後にお風呂に入ったとき、周りがどうも気になってしまうあの感じがずーっと抜けませんでした。
 工女が直面する恐怖を淡々と処理する蛾次郎の姿が、家族のために会社に忠誠を尽くしている工女と重なります。結局、会社に食い物にされている一人なんだと、強い同情を感じました。時代や形は違えども、現代でも同じように会社に仕える人がいるような気がして、ちょっと自分を思い返したりもしちゃいました。
みなぞ さん (20代女性 会社員)
 一貫してですます調で語られる事によって、その世界に入り込みながらもどこか客観的に眺めているよう……。生生しい話のはずなのに、そこにどっぷり浸かっているのに、どこか昔話を語って聞かせてもらっているような、そんな不思議な読後感を味わいました。
 物語の内容としてはキャッチにもあるように妖であり淫であり生である。救われない。残酷である。けれど美しい。最後の一文を読みきった時、そう思いました。全体的に薄闇が広がったようなその文が、その物語が、その世界が美しいと思いました。
 大賞もなるほどと頷ける。辿り着く先は決してゴールではないだろうと思いながらも、しかし項をめくる手は止まりませんでした。作者のまた違った世界を見てみたい。次回作が楽しみでなりません。
 好きな登場人物はお千代。人として、人のまま狂っていった。それは弱さかもしれないが、おそらく幸福と呼べるものであったのかもしれないと、思うばかりです。
  最後の一文が好きです。まさに残酷(グロテスク)にして淫靡(エロティック)にして、何より美しいと思わさせられました。脱帽。
七生子 さん (40代女性 主婦)
 明治期の日本を想像させる物語世界、貧しさから親に製糸会社に売られるお初たち。模範工女目指して製紙工場に向かったお初たち少女を待ちうけていたものとは……!
 まだまだ12歳、あどけなくって子供っぽさが抜けない純朴なお初がいいんですよね。お初を待ち受けているものが気になって読む手が止まらず、一気読みしてしまいました。
 親のために、家に残してきた幼い妹たちのためにとどんな苛酷な境遇にも必死で耐える少女たちの姿がいじましく、とても切なかったです。
 何回か読み返して気づいたんですが、物語の最初から伏線が散りばめられていて、読み逃してしまいそうな何気ないエピソードの一つ一つが終盤にかけて畳みかけるように利いてくるところが「ああ、そういうことだったのか」と、とても上手く、そう来るんだろうなと分かっても、胸に痛くていたたまれませんでした。
 前半の不穏さを含みながらもどこか明るい青春物語の雰囲気が一変する終盤にかけての展開が、目を背けたくなるぐらいグロテスクで鬼畜で、まさに「少女地獄」だなあと涙したのでした。若旦那への仄かな思い、同じ境遇の新工同士寄りそううちに芽生える友情など読みどころも満載です。
 決して心地良い余韻が残る物語ではないけれど、でも確実に何かが心に残る物語だと思います。
 好きな場面は、p.193から194にかけてのお初の夢のシーン。まだまだ子供だと思っていたお初が見た官能的な淫夢にどきどき。そして知らないようでいて、それとなくおぼこ糸の事情を察していたのかとも思いました。
Bukki さん (40代女性 その他)
貧しい明治時代の農村風景を描きながらも、工場に送り込まれるまでは、工女たちの幼い年齢もあって牧歌的な雰囲気が漂っているのが微笑ましく感じました。女子中学生のような陽気な賑わいから身の毛もよだつような恐ろしい状況へ容赦なく放り込まれていく描写が、平易な文章であるがゆえに強烈な印象を与えました。
工女たちが哀れなのと、苦しい中でも働かざるを得なかった現実の厳しさに経営者たちへの怒りが抑えられませんでした。工女たちが空腹のあまりその煮釜から拾い上げて蛹を食べるその心情を思うと、誰が彼女たちが負った心の傷を癒せるのかと気持ちが重くなりました。苦手だった虫が尚一層苦手になりそうです。
 好きな登場人物はお千代ですね。気が強いのも妹をかばいながら生きてきたからだと思います。経済的に苦しかった農村での暮らしに加え、障害を負った妹の世話をするのは当時のことを思えばとても大変なことだったと思います。とても心が強くて賢い、そしてやさしい娘なのだと思います。
モモ さん (30代女性 会社員)
 グロい話が苦手なので、最初はびくびく読んでいたが、お初が製糸工場で怪しい物事を見聞きするころからのめり込んでいた。高い壁で隔てられた逃げ場の無い世界でお初の仲間達が、徐々に工場の狂気に染められてゆく……。それが強制だけではなく、故郷に残した家族の為、自ら望んだ者もいるというのがまた切ないです。
 世話焼きなお千代が、残酷な内容の続く物語の中で、唯一の光だった。
 工場の若息子が、繭を抱く場面が印象的だった。この物語の狂気を、見事にあらわしていると思う。
ミッチー さん (40代男性 会社員)
 この作品の読後感は、野に咲く小さな花の群生地のような、なぜか温かくみずみずしい印象が残り、むしろさわやかと言えるほどです。日本のようなそうでないような遠い地名、主人公たちが放つ可愛らしい方言、幼い女同士で語られる田舎の会話や些細な諍いなどがとても微笑ましく、どんどん読み進めていっても、ホラー小説によくある“身も蓋もない喪失感”が感じられず、むしろクスッと笑えるところが読者を救ってくれます。破滅を感じさせない、現実感たっぷりの色のついた女の子生活の色気がありました。貧しい幼い少女たちが、苦しい労働を強いられる。そんな絶望感とミスマッチの、主人公たちの温かい女の子特有のお喋りが、見事に悲劇を喜劇に押し上げ、物語を重層的に強く織り上げています。繭の妖しさ、できあがる絹糸の可憐さ、希少さ。それと大人の女になる直前の豊満な肉体と甘酸っぱい薫り。それらを見事に繰り出し、縦横に絡ませ、一つの作品に仕上げた作者の技の結晶はまさに工芸品です。
 最も印象に残ったのは、奉公に出る日、集合場所である寺に新しい女工たち、福助さん、妹たち、彼女たちの両親が一度に会するシーンです。暗黒への船出なのに妹たちの明るさが際だっていて切なかったです。甘いものに縁がない妹たちがボタモチを目を輝かせて頬張っているのを見て、お千代は感動しています。
 どん底の境遇に生まれても、家族を思いやる愛情は普遍です。自らを犠牲にして家族を幸せにする。古今東西貧しい生活には必ずある悲劇で厳しい現実ですが、いちばん尊くていちばん美しい人間の行動です。
 不安・安堵・絶望のスライドが激しく入り交じる伏線描写も見事でした。
ヒラモト さん (10代男性 その他)
 あまり自分はホラー小説を読まない人間だが、この作品は読者を惹きつける魅力があり、一気に読了した。
 製糸工場に奉公することにより故郷に錦を飾る。初めは希望や夢にあふれて、新しい生活に楽しい情景が浮かぶが、ページを捲るごとに違和感が増えていき、おぞましい展開に寒気を覚えた。物語に入り込みやすい筆致であり、この著者の次回作が出たら読んでみたいと思った。
ユウ さん (20代男性 専門職)
 今までホラーに手を出したことがないので、少し構えて読み始めたが、そんなことは不要で、すぐ引き込まれた。むしろホラーとして読めなかったのだと思う。
 中身はすごく面白い。12歳で親元を離れて、ふるさとのために働くお初たちのけなげな姿勢にすごく考えさせられた。しかしところどころで見られる彼女らの子供っぽい考えとか、方言の言葉遣いにはすごく癒された。
黄泉 さん (30代女性 専門職)
 もしも重厚な文体で書かれていたなら、体の芯から震えが止まらなくなる作品だっただろう。
 おぞましさと、恐怖、切なさと口惜しさとで女性なら怒りさえ覚えたかもしれない。恐らく巧妙に計
算してだと思うのだが、名前からして笑ってしまうような馬鹿馬鹿しさをちらつかせるあるキャラクターや、女工たちの方言が上手く完全なる感情移入を防いでくれるので一歩引くことができる。そして気付くのだ。だからこれは、虚構のエンターテイメントであって真実ではなかったのだと。
 学生時代さらっと日本史で学んだ程度の知識しかなくてもそう思わせる怖さがあるが、志村ふくみ著の「一生一色」を拝読して糸が繰られてから織物ができるまでを読んでから再読するとますますグロテスクに想像が膨らんでしまった。歴史として、また産業として、背景をきちんと抑えていなくても楽しめる作品ではあるが・・・学びなおしてから再読すると二度楽しめるかもしれません。
 印象に残ったのは若旦那。好き、というよりは寧ろ大嫌いなのだが・・・悪戯におかしな設定というわけではなく、心底獲り付かれてしまっている異様なキャラクターは、主人公や女工さんたちの予想と憧れをはるかに裏切ってある意味秀逸。
 好きな場面は、第一弾の夏繭の糸繰りが始まった夜。工女たちの悲鳴の意味が、読み手としては漠然と想像できるもののまだハッキリしないために、お初と感情がシンクロしたから。のちのち具体的な状況が想像できた後でどうしても思い返してしまった。