いただきましたモニター当選者の皆様のご感想は、こちらのページ上にて掲載させていただきます。感想を御覧になって、お好みの本を見つけてください。

二重生活

■第21回モニター「二重生活」小池真理子

※いただいた文面から、一部抜粋させていただきました。

まちこ さん (20代女性 専門職)
流れるような文章に、どんどん引き込まれる構成。夢中になる、ってこういうことをいうんだろうなと改めて思う。小池真理子さんの本を読む時間は本当に至福のときだ。
登場人物の行動は、いずれも一般的には容認できないことが多い。男女の仲というか、人間関係の入り組んだ感じ…性と生の生々しい感覚が終始漂っているし、特に珠に感情移入しているから自分もとても苦しい気持ちになる。途中、「なんでこんなことしてるんだろう私……」とふと我に返る瞬間があった。珠と同一化していた私は、尾行・偵察という行動そのものへの嫌悪感と倦怠感を感じていた。
とても疲れる。人の秘密というのは、つまりこういう重さなのだ。

しかし、だからといって人とまったく関わることなく生きることはできない。”結局のところ、人は秘密が好きなのだ。”という一文に、もう認めざるを得ない、と自分自身の思いを自覚して、大いに救われた気持ちになった。珠のようにはなれないけれど、私も好きだ。善悪含め、人の隠れた一面を発見するのが。

最後に、作者の小池真理子さんが、どうしてこういう作品を書こうと思ったのか、その動機を知りたいと思った。
清花 さん (10代女性 学生)
読み進めていく内にどんどん面白くなっていって早く次の展開がどうなるのか楽しみで仕方ありませんでした。赤の他人を尾行することは、ほとんどの人が体験したことはないと思います。でも非現実的な内容にも関わらず、何故か現実にある出来事のような気がして不思議でした。
tukiyo さん (40代女性 主婦)
「読み終わり」が「終わり」ではない作品です。
すべてが丸く収まったような、まだ「コト」は続いているような、安堵の中にもざわめきを残す、不思議な作品でした。
珠の中の「過去」「好奇心」「猜疑心」が「文学的・哲学的尾行」を後ろ盾として「行動」の形をとり、次第にコントロールが効かなくなっていく様が怖かいのに、なんだか行為を焚きつけているような、応援しているような、自分に気づく・・・。
生きている作品です。

「初めから失われていて、生涯、決して手に入れることのできない父性」・・・・・・。
珠が篠原教授に淡く求め、ひそかに感じていたものを表現したこの表現は、「文学的・哲学的尾行」と無関係に思えないから・・・。尾行をしている間は‘求め’であるが、何かを見出したからといって、何かを手にしたことにもならない。その不安定さが、重なる。それと同時に、子供が親の気を引こうと、‘見て、見て!’とする行動が、実は珠にとっての「文学的・哲学的尾行」だったのではないか、と思えた。

一時 小池さんの作品を良く読んでおりました。しばらく空いてからの、本作品は自分が成長した分、心理描写への傾倒も深くなり、‘読み手’としてではなく‘関わった者’という気持ちにさせられる、引き込まれる作品でした。昔読んだものも、もう一度読みたくなってきました。ご活躍を応援しております。
あゆ さん (40代女性 その他)
尾行する主人公の珠をこっそり尾行しているような、不思議な感覚がありました。珠の大胆な尾行にハラハラしつつ 「もっと探って欲しい」 そんな欲求から一気に読んでしまいました。
25歳の白石 珠という女性を形成した重苦しい過去も、知的で穏やかな登場人物が多い為か、はたまた静かに流れるような文章で書かれている為か、暗い感じは全く無く、彼女の心の動きがすんなりと入ってきました。
人には様々な人生があり、喜び、悲しみ、疑惑、嫉妬、そしていくつかの秘密を抱えて日々が過ぎていく・・・ そんな日常をあらためて思い返しました。
今日私は誰かに尾行されているかもしれない? そんな不安やほんの少しの期待を持って毎日を過ごしています。
自分の人生について見直すきっかけになりました。小池先生の他の作品も読ませていただこうと思っています。
カーレン さん (10代女性 学生)
大学で受けた授業の中に出てきたソフィ・カルの「尾行」。それに唆されて自分も何気なく尾行をしてみようという行動がすごい。こう上手くは絶対行かない気がするけれど、なんだか自分も誰かの尾行をしてみたくなってしまった。
ゆきはな さん (30代女性 会社員)
「文学的・哲学的尾行」なので、尾行の動機に欲望や興味本位といったいやらしさがなく、全体的に淡々としていて、登場人物も皆どこか乾いていてクール。さらさらとした感じの話でした。細かい描写がさすがにすばらしく、人物や行動を鮮明にイメージすることができました。
最後のラスト一文が小池作品らしい後味でした。
ゆかんかん さん (10代女性 学生)
まさに二重生活。主人公珠の様々なギャップに惹きつけられました。物語の設定や発想がとても面白い。
わたしはこの本を読んでいて、谷崎潤一郎の「秘密」を感じさせる部分があったように感じた。人間の欲望や、本能そんなものが描かれているように感じた。
とにかく面白かった!読んでいると本に意識が集中し、わたしまで強い好奇心を抱くようになっていました。わたしは本作で初めて小池真理子さんの本を読んだのだけれど、もっと読んでみたいと思いました。興味が湧きました!
話しの内容は大人な感じではあるが、文章は読みやすく、いい意味で重たく軽い本でした。
最近読んだ本のなかで、一番おもしろかったです。これを機に小池真理子さんの作品をもっと読んでみたいと思いました。
ぷるぽ さん (10代女性 学生)
恋愛小説はほとんど読んだことがなく、小池真理子さんの本も今回初めて読みました。「二重生活」という題名から、まず恋愛小説が苦手な人は手に取らないんじゃないでしょうか。だからあえて言いますが、この小説には「恋愛に対して我儘な女性」とか「イチャつくだけのシーン」とか、さらにいえば「過激な愛憎劇」とかいう要素がありません。つまりは、これが大人の恋愛小説なのですね…!!   恋愛小説のイメージがかなり変わりました。それも珠のお陰だと思います。めったに激さず、冷静で、それでいて人間らしい感情を持っていて好感が持てました。(ある意味)芯がぶれないところも素敵です。また、サスペンス、ということでそのドキドキ感もしっかり味わうことが出来ました。この主人公は、どうなるの? 周囲との関係はどうなってしまうの? と気になる気になる…。非恋愛(小説)至上主義な私でも楽しめる恋愛小説があるのですね(くどいですが!)! 楽しめました。
檸mon さん (40代女性 公務員)
ソフィ・カルの作品が心に残り、「文学的・哲学的尾行」という行為をしてみたくなった白石珠。対象者は気になった人なら誰でもよかったのかもしれません。
「或る人物の後をつける、ということは、その人物の人生を疑似体験する、ということと同じ意味をもつ」とか。人生生きていれば何かしら気になったアイドルなど最近ではブログやホームページなどで今何をしてどこにいるかなどはっきりとわかったりするので、【尾行】することなんていとも簡単におこなわれる行為なのかもしれない。
退屈だったり虚無感があったり何かが充たされなかったり心の小さなすきまがあるときにある一定の人たちは、ごく個人的な「目的や「目標」を持った瞬間尾行をしてしまうのかもしれませんね。しかし妄想がふくれあがりすぎると、とんでもない大きな事件がおきてしまうこともある。
小説などを読んでいて感化され尾行など同じことをやってみたいという衝動をおさえきれなくなる人もいるのかもしれないが、こういう方は探偵の仕事をするととてつもない大仕事を簡単にこなせてしまうのかもしれないと思いました。

自分にはない気持ちや行為を読ませていただき、違う世界を垣間見れる『二重生活』がたくさんの方に読まれること祈ってます。
これからも応援させていだだきますので、お体に気をつけてがんばってくださいね♪
みれちん。 さん (10代女性 学生)
二重生活ですが、あらすじを読んでみて、とても興味を持ちました。
今まで読んだことないような本で読んでみたいと思いました。
実際読んでみて、場面風景がこんなにも伝わってくる小説は初めてでした。
学生には多少理解が難しいなと思うところもありましたが、それ以上に続きが気になっていつのまにか読み終えていました。
人間の表ではなくて、裏の部分?というのでしょうか、そういうところもかかれていて、でもだからといってどろどろしすぎず、とても素晴らしかったです。
小池真理子さんの他の作品も読んでみようと思います。
れもん さん (40代女性 主婦)
主人公の大学院生、珠が行う"文学的・哲学的尾行"というものにとても興味を惹かれました。ほんの思いつきからやってみた"尾行"が徐々に珠の心理に変化をもたらしていく様が細かく描写されていて、文字通り目が離せなくなってしまいます。
日常に潜む狂気(に近い思い)を描く小池さんの作品が好きです。この作品も女性の心理描写のみで読み手を惹き付けていく力をもったストーリーだと思います。これからの作品も楽しみにしています。
あぶ さん (40代女性 主婦)
小池真理子さんといえば、都会的な男女を描いた小説というイメージがある。
この小説も、恵比寿の高級ホテルのスイートルーム、イタリアンレストランで飲むワイン、華やかな女優、など「都会的」な匂いがむんむん漂う。 登場人物たちもおしゃれで都会感がある。 そういう意味では小池作品らしいともいえる。
しかしこの話の中心は、文学的・哲学的とはいっても「尾行」である。 舞台はおしゃれなホテルであろうと、のぞき見である。そして読むのは都会的でない俗物である私。 「ふんふん、それから?」と好奇心でいっぱいになってしまう。
罪悪感を感じずに尾行しているような気になり、人の秘密を知るという蜜の味を楽しめる。おしゃれで、相手に遠慮しながら争う事を極力回避する。 そんな人でも、刺激を知ってしまうとその魅力に取りつかれる。 そうでしょ、気取った世界より、下世話な世界の方が楽で楽しめるよ、こっちへおいでよと誘い込まれるような引力がある。
都会的な雰囲気の中に「土のニオイ」を感じた物語であった。

最後に草食系、事なかれ主義に思えた卓也が、珠に対してやきもちを焼き、情熱を見せるところに女としてグッとくるのであった。

大変面白く読めました。男と女って「刺激」というスパイスがあるともっと盛り上がる、面白い生きものだというのがよくわかりました。ありがとうございました。

ぺぺ さん (40代女性 主婦)
尾行の対象者である男性は尾行されている事に気付きながらも愛人と会い尾行されている事を楽しんでいるのではないか・・・と思いながら読み進めていました。そう思ったのは、あそこまで見つめられていて気付かない人っているでしょうか。私なら絶対気付くと思います。
尾行の対象者は実際気付いていなかったようですが、視界にはチラチラ入っていたようで実像がパズルのように合わさった時尾行されている事がわかったとあり、こういうことならありかなと納得しました。
主人公の彼氏に対する心の広さに最初は脱帽していました。彼氏の行動に疑問を持っても見て見ないふり。なかなかできるものではありません。私もこうありたいと思いました。
ただ後半になってくると尾行と自分の生活がごちゃ混ぜになってきて、やっと彼女も人間らしい感情が出てきました。ドキドキハラハラ一気に読んでしまいました。
とても勉強になりました。今の世の中にぴったりだと思いました。女性の方必見です。
ロミロミ さん (30代女性 主婦)
小池真理子さんの作品を初めて読みました。読みやすかったので、あっというまに読み終えました。
主人公の主な行動が「尾行」だったので、それはストーカーじゃないの?と疑問に思いました。でも主人公的には「哲学」の検証なんですよね・・・。なかなか理解しがたいです。どちらかというと、尾行されていた側の主張の方が私には理解できます。実際に主人公のような人物が身近にいると怖いです。
たまこ さん (50代女性 自営業)
読みながら主人公と同じ様に他人の秘密にドキドキするのです。人間は、どうしてこうも他人の秘密が、好きなのでしょうか? 覗きたくなるのでしょうか?
そして、覗いたほうにも 覗かれたほうにも、これまでには戻れない人生に向かってしまう。そうと、わかっていても秘密の妖しい魔力には、抗えない。

まあさ さん (50代女性 自営業)
ジャン・ボードリヤールの「他者の後をつけること、自分を他者と置き換えること、互いの人生、情熱、意思を交換すること、それは人間が人間にとってついに一個の目的となりうる、おそらく唯一のみちではないか」、この一文で始まる、大学院生珠の「文学的・哲学的尾行」行動は、先を想像しながら引き込まれた。
教授の言葉、「ある人物の後をつける、ということは、その人物の人生を疑似体験する、ということと同じ意味をもちます。そのため、尾行者がそれまで抱えていた人生の重荷は、尾行を続けている間、一瞬であれ、解き放たれる」。 家庭・会社・近所・人間関係・政治・事件・そして災害・・・誰もが何かしらのストレスを抱えざるを得ない毎日。そこから解き放されることが出来る、逃避とも言える、「依存の罠」。現在、人生最大といえるストレスを抱えている私にとって、見せ付けられたこの「罠」に吸い込まれないようにする力が必要と思った。
ショコラ さん (30代女性 自営業)
かなり描写が細かいため、まるで主人公の珠が見ているものをそのまま私も見ているように感じました。珠が尾行している場面では一緒に尾行している感じがしました。
また、「私が〜した。」という書き方ではなくて「珠は〜した。」という書き方なのでこの小説自体が、珠について尾行した報告書のようにもとれました。
小説の内容としては、近所の人を尾行する、ということで現実的ではないかもしれませんが、尾行以外の珠の行動などは普通の人と変わりないので、小説というよりは珠の日常を覗いて見た、という気もしました。
こうっち さん (30代女性 無職)
最初のページで作品に引き込まれてしまいました。
文学的、哲学的尾行というものが存在するのだろうか。それを聞いて何を思い浮かべるだろうか。尾行に文学や哲学といったものがあるものなのだろうか。一体これはどういう意味なのだろうか。その尾行についても規則がいくつかある。二人の間に接触や関係を作りだすような出来事は一切生じてはならない。秘密を明かしてはならない。ということなのだ。一体何なのだこれは? それを考えながら読み進めていくうちに、いつの間にか私の心はわしづかみにされていた。
石坂という男を尾行していく中で、珠は自分の恋人も浮気をしているのではないかという疑心暗鬼に陥ってしまう。余計なものを見たがために、変な妄想が広がっていく珠。知らぬが仏という諺は伊達にあるものではないなと感じてしまう。それでも、尾行者の行く末を知りたくなる珠。そして、尾行したがために珠が妄想を膨らませていき恋人に疑惑をもつ珠の行く末も知りたくなる。気付けば、石坂を尾行している珠を尾行している読者という図式が出来上がっているのだ。
読み終わった後、最初のページに戻り読み返すことで哲学的、文学的尾行の意味が胸にすんなりと落ちてきた。

尾行というものを、文学的、哲学的に表現したこの本はとても面白かったです。一気に読んでしまいました。今回始めて小池真理子さんの本を読みました。最後まで予測できない展開にドキドキさせられ興奮もしました。これからも、多くの作品を書いて、私たちにたくさんのドキドキをください。小池さんの他の作品も読んでみたいと思いました。
よう さん (20代男性 学生)
ページ数を感じさせない小説でした。文学的・哲学的尾行をやってみよう、という変わった思考の持ち主である珠。実際に実行しようとはまず思わない。けれど、そこに篠原への淡い気持ちが在るとすれば納得がいく。珠が選んだ対象者は石坂という向かいに住む男。ここにも本人すら気が付かないほどの幽かな気持ちがあるのだと思いました。そもそも文学的・哲学的尾行というものを実行すること自体無理がある、そう思いながら読み進めていきました。結局、珠は私情を挟むようになる。それも過剰に。珠の気持ちの起伏がこの小説の見せ場の一つだと思いますが、いかにも女性らしい珠の繊細で激しい心の揺れ具合にページを捲る手が止まりませんでした。尾行が何を生んだのか。それは正直よく分かりません。ただ人は何かを選ぶときにどれだけ意識しないように意識しても、そこには何らかの理由が付随してしまう。ふと、読書という行為は尾行という行為に似ている部分があるのではないかな、と思いました。今回、読書モニターに応募して、この本を読むことができたわけですが、この本に登場する人物たちのことを僕は知るはずもない。にもかかわらず、こんなにも夢中になれる。全く文学的でも哲学的でもないけれど、知ることのできない部分を知る喜び。何か通じるものがあるのかな、と。ただ読書は楽しむことだったり、考えることだったりと目的がはっきりとしていることも多いとは思いますが…。最後に一つだけ言えることは凄く考えさせられたということ。頭の中の糸がぐちゃくちゃに絡み合ってしまってうまく書けないのが残念ですが、文学的・哲学的尾行を試みた女子大学院生・珠の物語を読むことで文学的・哲学的にあらゆることを考えさせられました。

珠が卓也と桃子の関係を邪推する場面が、印象に残りました。考え出すときりがなく、常に邪推し続けている珠ですが、その心持がとてもリアルで、女性の心模様はこのような感じなのかと妙に感心しながら読んでいました。卓也にしてみれば、桃子との関係を疑われるなどとは思っていなかったのかもしれません。ただ二人の関係が珠には妬ましく思え、歪んで見えてしまう。それだけ愛されているということで、幸せ者じゃないか、と思う瞬間もあったのですが、それだけでは言えない雰囲気が漂っていました。このまま尾行に嵌っていくとどうなるのだろうと少しいやらしい気持ちを抱いてしまいました。

初めて小池さんの作品を読ませて頂きました。直木賞を始めとする様々な文学賞を受賞され、選考委員も務められ、偉大なベテラン作家さんと言うイメージを持っていましたが、なぜか今まで読んだことはありませんでした。恋愛小説というジャンルが僕を遠ざけていたのかもしれません。けれど、今回の『二重生活』は恋愛以上の要素が詰め込まれていて、凄く楽しむことができました。きっと小池さんの他作品もそうなのでしょう。是非、違う作品を読んでみたいと思います!最後にこの小説を読んで、よし、尾行してやると思う人が現れるのではないかと考えてしまいました。実際に実行することは難しいですが、かなりスリリングで楽しみがいがあるか、と。それだけ影響を与えられたということです。これからも人々をはっとさせる小説を書き続けて頂きたいです。
もも子 さん (50代女性 主婦)
石坂としのぶの不倫が軸となって、それに珠自身の過去と現在の恋人との関係が合わさり、これはもうかなり濃度が高くなるはずなのに、そんなどろどろした雰囲気はほとんど感じられなかった。設定や登場人物、すべてがオシャレで洗練されている印象を受けた。感情のぬかるみに落ちそうになると、『文学的・哲学的尾行』がブレーキとなって阻止していたように思う。石坂も珠に尾行の理由を聞くものの、この『文学的・哲学的尾行』という言葉で煙に巻かれていた。いかにも学問的で、小難しそうな『文学的・哲学的尾行』が、いつのまにか面白そうなものに思えてきて、物語を読み終わったとき、この『文学的・哲学的尾行』みたいなことをちょっとやってみようかな、と思ってしまった(笑)。
佳代子 さん (40代女性 主婦)
尾行や秘密という言葉が持つどきどきする緊張感にあふれていて、主人公の気持ちの日常の変化とともに楽しめ、冒頭から引き込まれました。作者の女性ならではの細かい描写、視点、男女の会話がリアリティにあふれていて、すごく面白かったです。長編小説でしたが、最後まで物語がどう展開するのか気になり、一気に読みました。
「びょうびょうと拡がる、いちめんの砂漠を見ているような思いがあった。」という一行がとても印象的でした。主人公の気持ちの説明なのですが、自分の内面と向き合って自分の孤独を感じる場面でせつなかったです。
かぴ さん (30代女性 その他)
尾行すること。そういうと、犯罪めいていたり、良くないイメージがするが、この珠の尾行は分かるような気がするものだった。
実際石坂が感じた不快感もわかるし、珠の感じた罪悪感のようなものもわかるが、この頭がこんがらがる「哲学的・文学的尾行」は自分の普段の生活が新鮮になるのだろうと思う。だからといってやってみようとは思わないが、自分に時間と気持ちの余裕があったら、もしかしたらやってみてもいいかも、とも思う。そして一度やったら珠のように中毒のように陥っていくのだろうと思う。
尾行をすることで、いろんな妄想をしたり、過去の想い出を濃く考えてしまう珠の気持ちが細かく手に取るように自分にも感じられて、入り込める小説だった。

主人公の気持ちが細かく丁寧に描写されていて、読者の自分も同じような気持ちにさせる力があると思いました。本を読むことで、その世界にしっかりはまれる小説をありがとうございます。

香坂 さん (20代女性 学生)
尾行という行為で得た様々な感情を、都合良く自分から切り離したりせず、自身の立場にも置き換えたうえで思考し、戸惑う主人公の珠にとても共感ができました。ただ尾行して緊迫感を楽しむだけではないところが、この作品の魅力的な部分だと思います。
作品を読み進めていくうちに、わたし自身が石坂を尾行しているような気分になり、珠の大胆な行動にはハラハラさせられました。また、少しずつ得られていく情報を組み合わせ、石坂の人物像を推測して楽しみながら読めました。
一度他人に興味を持ってしまうと、とことんつきつめたくなるものだなと思いました。

今回初めて小池真理子さんの作品を読ませていただきましたが、「ああ、こういう人っているよね」と思いながら、自分の実生活を感じながら読めて面白かったです。これから、他の作品も読んでいこうと思います。執筆活動頑張ってください。


st さん (40代男性 会社員)
ある書物に影響されて行動するようになることはよくあることと思います。
この作品では、ソフィ・カルさんの「文学的・哲学的尾行」を題材にしたもので、現実の世界で「尾行」体験をしてみたらどうなるかという、深いテーマです。いわゆる「人間観察」にも似たものではないかと思いますが、一歩間違えると犯罪行為で訴えられかねないところが微妙です。
尾行によりその人の人生を疑似体験するということについては興味深いのですが、かえって、他人の秘密が自分自身の私生活の秘密と重なって見えてくるなど、自分自身への影響が少なくないというのはなかなか考えさせられる内容だと思いました。
take さん (20代男性 学生)
主人公の珠が自分と同じ「院生」という立場なので非常に共感できました。
読み進めて行く際、尾行と言う非日常的な行動に自分がハマってしまい、その行動自体を受け入れてしまえる面白さがあります。また、他人の秘密を知っていく過程で生まれる猜疑心に襲われる珠の葛藤から人の脆さを見ることができました。
珠はソフィ・カルと出会い尾行を始めましたが、この作品の読者にも尾行を始める人が出てくるのでしょうか。そのことを考えると怖さを覚える反面楽しみがこみ上げてきます。

小池先生の作品を読ませて頂いたのはこの『二重生活』が初めてでした。取り上げたテーマがとても面白かったので、小池先生のファンになってしまいました。これからも生み出されるであろう素晴らしい作品をお待ちしています。
正玄 さん (20代男性 学生)
読者の視点から見ると『三重生活』であった。珠の尾行相手石坂の生活、そして私の尾行相手珠の生活、最後に私自身の生活。<文学的・哲学的尾行>という行為を二重にする読者の私は尾行相手二人に同化し自己の形成に成功したのだと思う。
つまるところ、自分自身というのは他者との対比によって位置づけされるものであるのだろう。そのために、他者の不安が自己の不安の原因となりうる。これは本書から学んだことだ。
他人を尾行することは他人の人生を疑似体験することだとある。これは読書という手段で主人公やそのほかの登場人物に感情移入することにも似ているだろう。
今まで多くの本をもって追体験してきたし、本書に至っては三重に人生を知った。多くの人生をたどるということは自分の選択肢の幅が広がるということで、私にとって珠と卓也の恋愛観は新しい発見だった。これからの読書生活において、他者の人生の体験ということを明確に意識して読書をしていこうと思えた。

珠の「タクに妬かれるのは嬉しい」というセリフが最も印象に残りました。
私はやきもちという気持ちが恋愛を成功を妨害するものだと思っていました。しかし、こんな考え方でお互いに共有できるなら嬉しいことこの上ないと、珠に、卓也に重ねて考えることが出来たからです。好きだから妬く。好きだから妬いてくれたら嬉しい。
こんな気持ちがすれ違わなければそれは素敵なことだと思います。


ゴンベー さん (20代女性 学生)
近所の男性を尾行し、彼が不倫をしていることを発見する。”観察”を続けることで、彼女と、彼氏との関係も歪み始めていく――。
あらすじを聞き、どろどろとした憎愛劇を想い浮かべたのは私だけではないでしょう。
しかし、本書の主人公は男性の不倫に介入することもなく、彼らの三角関係は主人公とは離れたところで展開していきます。そのどろどろは彼女から外れてところで起きており、彼女自身も尾行対象者の出来事を邪推することなく、事実のみを見ることを常に意識しています。
何の関係もない他者の秘密を覗くという楽しさ。「尾行」と言ってしまえば、眉をしかめる人が大半な世の中ではありますが、この楽しさに共感できる人は多いのではないでしょうか。少なくとも、私はこの楽しさが理解できます。全く自分とは関係の無い人の一生がどうなるのか、無性に気になる。これは、読書の楽しさと同様のものなのではないでしょうか。
読書は他者の人生の疑似体験である、というのはもはや周知の説でしょう。しかし、いくらリアリティのある内容や書き方であったとしても、それは「紙面の中だけの話」であり、読者にとっては架空の話にすぎません。また、逆に紙面の向こうの出来事なので、登場人物たちに見つかることも、それを覗いていることに社会的なリスクも負いません。誰もが、「文学的・哲学的尾行」を行うことにより、見ず知らずの他人の秘密をのぞいてみたいと欲している。けれど、それをするには様々なコストが高すぎる。だからこそ、多くの人は読書をすることでその欲望を抑えているのではないだろうか、と思ってしまいました。
ねぎ さん (20代女性 学生)
過去、現在、胸に凝(こご)った恋たちが、他者の「観察」によって解けだし、絡まりあう――。
”哲学的・文学的尾行”の名の下に、近所の男「石坂」をつけまわす女子大生「珠」。どこか醒めた彼女の心は、熱烈な不倫現場を目撃したことを機に、現実と妄想、他人と自己の境目を曖昧にして縺れ始める。
淡々とした描写の底に漂う、濃厚な熱の香り。関わりのない”誰か”の秘めた想い、それを覗き見てしまったら、もう戻れない。苦く甘美な毒は、連鎖反応のように広がっていく――『秘密』が生む感情のざわめきがこちらにまで伝染してくるようでした。「珠」が「石坂」を尾行すると同時に、私たち読者もまた「珠」の私生活を覗き見ている。そして彼女と自分を重ね合わせ、胸に痛みを覚えたり、自身の恋に思いを馳せる。
読んでいる間中、ずっと身体の中心が苦しくて、熱かった。幾つもの愛、恋、嫉妬、憎悪、思惑、あるいは名付けがたい感情が時空をまたいで重なり合って、夜を徹して読みました。この小説はどこへ行き着くのか。ただただページをめくり、「珠」を追いかけました。
訪れた結末は、***(ネタバレのため中略)。けれど、本当の最後、ぞくりと背中が粟立ちました。まさに読者である私が、「珠」とシンクロした瞬間。一度味わってしまった秘密の快楽に、私も彼女もとっくに支配されていた。
もしかすると、明日、不意に誰かをつけてしまうかもしれない。あるいは密かにこちらを見つめる眼差しを感じるかもしれない。どこまでも巻き込まれていきそうな、抗いがたい魔力に、どうやらどぷりと浸かってしまったようです。

『倒錯の庭』を読んで以来、秘めやかながらくらくらするほど熱い小池真理子さんの世界に魅せられてきました。今回、読者モニターとしてこの作品を手に出来たことを本当に嬉しく思います。
私自身、何年も前の恋が胸を離れず、また、大学の教授に熱をあげていることもあって、おそろしく没頭して読み耽りました。眠れぬ夜をありがとうございました。
これから先も、恋をし続ける限り、忘れえぬ思いが胸に留まり続ける限り、小池さんの作品は私の一部であり続けます。
M.T さん (20代女性 学生)
主人公は大学院に通う女の子、白石 珠。心に残っていた文学的・哲学的尾行を思いつきで実践に移す。尾行対象の石坂について詳細に記録するにつれて、今度は彼女と同棲中の卓也が浮気をしているんではないかという妄想が強くなってゆきます。他人の生活が自分の生活に侵食し始め、妄想と現実がごっちゃになる。読者である私もまた、石坂を尾行する珠の尾行者であるような感覚を覚えます。人は案外、周りを見ていないものです。特に携帯電話やiPodに夢中になる現代人の行動は、誰かにつけられることを許す危険性もはらんでいる。そんなメッセージさえ感じました。そして、尾行することによって珠というひとりの女性の内面が浮き彫りになってゆく手法は、実に面白いものでした。光あれば影ができます。その影は広がったと思えば、また縮まる。こちらにできたかと思えば、あちらにできる。うまく言えないのですが、そんなイメージが浮かびました。抱えている問題や考えている状況によって、受け止め方は180度変わるとでもいえばよいのでしょうか。これまでに読んだことのないような新鮮な読了感が残りました。

小池さんの作品を読んだのはこれが初めてでした。『二重生活』わかりやすいハッピーエンドではないからこそ、心に何か残る物がありました。尾行している感覚があり、またちょっとやってみたくなってしまいました。ソフィ・カルやジャン・ボードリヤールについては私は全く知りませんでしたが、簡潔な言葉の中に本質があるようで心惹かれました。すこし賢くなった気分です。ありがとうございました。