ストーリー

問題の多い料理店、本日開店いたします。

東京の出版社勤務の柳楽尚登(27)は、突然のリストラに遭い、吉祥寺の家族経営の立ち飲み屋が新しい職場と知らされ愕然とする。料理上手で調理師免許も持っているという理由で、料理人として斡旋されたのだ。
そこで待ち受けていたのは、店の長男で“ぐるぐる”モチーフを偏愛する変わり者の若手写真家・雨野秋彦(28)。彼は立ち飲み屋を改装し、前代未聞のエスカルゴ料理店〈スパイラル〉にするという。
彼の妹・梓の「上手く行くわけないじゃん」という嘲笑、看板娘・剛さんの「来ないで」という請願、そして三重の養殖場で味わう“本物のエスカルゴ”――嵐のような出来事の連続に、律儀な尚登の思考は螺旋形を描く。
心の支えは伊勢で出逢ったうどん屋の娘・桜だが、尚登の実家は“宿敵”、讃岐のうどん屋で――。

登場人物

柳楽 尚登
柳楽 尚登(なぎら なおと)
帯
香川県出身。讃岐うどん屋の次男坊。東京で編集という仕事を天職と思い働いていたが、突如リストラ(出向?)に遭う。料理人として雨野家に住み込み、エスカルゴ料理に挑戦することに。基本的に巻き込まれ体質で、理不尽な出来事への耐性は高い?
雨野 秋彦
雨野 秋彦(あまの あきひこ)
帯
吉祥寺の立ち飲み屋〈アマノ〉の長男。“ぐるぐる”モチーフを偏愛する若手写真家。唯我独尊・傍若無人な変人で、尚登を振り回すが、エスカルゴへの情熱は本物。〈アマノ〉を改装し、エスカルゴ料理メインのフレンチ〈スパイラル〉を立ち上げようとする。
雨野 梓
雨野 梓(あまの あずさ)
帯
秋彦の妹。高校生。背が高く色白で、外国人のような顔立ち。口は悪いが、裏表のない素直な性格。店の改装に反対し、家計を助けるためにガールズバーで働き出す。兄妹ながら秋彦と全く似ていないが、それには理由があるようで……。
榊 桜<
榊 桜(さかき さくら)
帯
伊勢うどん屋の娘。フランスの女優ソフィー・マルソーにそっくりの美女。尚登が三重のエスカルゴ養殖場に修業に行った際に運命の出逢いを果たす。メールを通じて交流を始めるが、二人の実家はうどんをめぐる“宿敵”同士で——。
料理・人物イラスト/松苗あけみ

試し読み

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コメント

絶賛の声

  • 津原泰水の料理を描く筆致は3D。
    味を伝える技巧は活字世界の美味しんぼなのである。
  • ——豊﨑由美さん(書評家)「本の旅人」2016年8月号より
  • 全文を読む

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読者モニターの声

  • むちゃくちゃだけど、むちゃくちゃおもしろい!
    お仕事、お料理、恋愛に、家族……色とりどり盛りだくさんなフルコースのようです。ついついもう一皿!とお代わりを求めたくなってしまうおもしろさでした。 おいしくて楽しい、「ぐるぐる」と「ずるずる」の物語、もっと読みたいと思いました。
  • ——ながつきさん(主婦)
  • エスカルゴなんて名前が違うだけでカタツムリじゃないか、そんなもの食べれる訳がないと思っていましたが、この本を読み終えてから本物のエスカルゴが食べてみたくて仕方がありません。そしてなんといっても個性的な登場人物たち! あっという間に読み終えてしまいました。
  • ——さくさくぱんださん(学生)
  • この小説は、食に興味がある方、食べることが好きな方、現在仕事に悩んでいる方や求職活動の方が読むと何か勇気づけられたり、ヒントになる本だと思いました。私もそのうちの一人です!
  • ——ちゃたろうさん(その他)
  • 人生なんて、エスカルゴの殻みたいな渦巻きぐるぐるに放り込まれたもんだよなと、あちこちに翻弄されつつ自分を見つけようと必死な主人公にいつしかエールを送っている自分がいた。優しい変人たちの織りなす人情ドラマ。
  • ——麦秋さん(その他)
  • お仕事、恋愛、料理、家族などたくさんの要素が詰まった暖かいストーリーでした。主人公が未知のエスカルゴ料理に奮闘する様子に前向きな気持ちになることができました。お婆ちゃんの言葉、「自分で考えんさい」が今の自分の心にも突き刺さりました。
  • ——きっしぃさん(会社員)
  • どれもこれも食べたくてたまらない! 油断して夜読んでいた私は夜中にお腹が空いてしょうがなかったです。クスっと笑えてちょぴりウルっと来てお腹が空く爽やかなお話でとっても楽しかったです。
  • ——紅葉さん(主婦)
  • 料理情熱にあふれた物語だった。エスカルゴの養殖のやり方や料理方法など丹念に取材されていてそこも面白かった。読んでいてお腹が減ってきた!
  • ——桐生景一さん(会社員)
  • エスカルゴという響きに怖気付くのはもったいない! クスリと笑いが漏れるテンポの良さ。残暑にうんざりしている人に勧めたい清涼感のある物語。
  • ——中村英歩さん(会社員)
  • エスカルゴには興味ないけど…と読み始めたら最後まで一気読み!
    辛いことはたくさんあるけど、好きなものや大切な人のために働く登場人物たちから目が離せないし、彼らを心から応援したくなる。そして、美味しそうな料理の数々! 吉祥寺に行ったらスパイラルを探してしまいそうです。
  • ——まこなさん(その他)
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書評『エスカルゴ兄弟』 豊﨑由美

物語が創造主に要請する、“グッとくる”声

メイキング・オブ・『エスカルゴ兄弟』――津原泰水
ロングインタビュー1(全3回)

1 かたつむりへの好奇心

2 取材は避けている

3 舞台の発見

メイキング・オブ・『エスカルゴ兄弟』――津原泰水
ロングインタビュー2(全3回)

II

4 物語の求めが人物像を生む

5 五分の魂を描く

6 味を言葉で伝える方策

メイキング・オブ・『エスカルゴ兄弟』――津原泰水
ロングインタビュー3(全3回)

III

7 物語の行方

8 面白くない人ほどコメディ向き

キャンペーン

取材・文|竹田聡一郎   撮影|内海裕之
photoimage

エスカルゴの王様とも呼ばれるブルゴーニュ産の「ポマティア」。この食材をテーマにしたお料理青春小説『エスカルゴ兄弟』発売を記念して、著者・津原泰水さんが名物書店員さんを招き試食会を企画しました。果たしてそのお味は? エスカルゴのイメージがぐるぐると変わるスペシャル座談会です。

エスカルゴ・ポマティアとの出会い

――『エスカルゴ兄弟』は出版社をクビになった主人公が、うずまきマニアの写真家と共にエスカルゴ料理の店「スパイラル」を立ち上げる、という物語です。スパイラルは吉祥寺の小さな店で、元編集者の主人公がここでシェフとして腕をふるうことになるのですが……。まず前菜代わりに「なぜエスカルゴをテーマに書いたのか」を教えてください。

津原 昔から螺旋にはなぜか惹かれるものがありました。日本橋三越の壁にアンモナイトの巨大な化石があるのですが、大好きですね。具体的には十五年ほど前からエスカルゴについての長い小説を書こうという構想があって、ことあるごとに調べものをしていました。そんなとき、エスカルゴ牧場という世界で初めて完全養殖、つまり世代交代していく養殖に成功した施設があると知って、早速取材に向かいました。

――そこで最高級ランクのエスカルゴ、ポマティアを初めて召し上がったのですか?

津原 そういうことになりますね。

――書店員のみなさんはどうですか? エスカルゴにまつわる体験、あるいはイメージについて聞かせてください。

高頭 輸入食材店で水煮の缶詰を買ってみんなで食べたことがあります。「美味しいな」と思っていましたが、『エスカルゴ兄弟』を読んでからは「あれは果たしてポマティアなのか」と自分が食べてきたものを疑うようになりました。

木幡 私は、今日が初体験です。同僚に「貝みたいなもんだよ」と言われて来ました。

新井 某イタリアンファミレスで三百九十九円のメニューを時々、食べます。今日は本物の、主人公の言葉を引用すると「誇り高き陸の貝」の味はどんなの?と楽しみです。

宇田川 まさに“デンデンムシ”の印象だったので自分とは縁遠いものだと思っていました。でも第二章で「料理とは出会いだ」とあるように、この小説は出会いの物語だと思うんです。だから今日、ポマティアとどんな出会いができるか、とても楽しみです。

――津原さんとポマティアの出会いは、振り返ってみてどうでしたか?

津原 エスカルゴ牧場では、定番料理以外に和風のものもいただきました。いちばん衝撃を受けたのは酢の物でしたね。比べるためにアワビもいただいたのですが、遜色はなかったです。

――それは作中にも出てくるエピソードですね。

津原 そうです。あのあたりは実体験がかなり活きています。今日もまずは和食、酢の物から始めましょう。みなさん、戦々恐々としながら楽しんでください。

――では、コースを始めましょう。まずは酢の物から。

宇田川 これ、見た目からは、エスカルゴってわからないですね。

高頭 うん。ただの貝の酢の物。


エスカルゴの酢の物

新井 あ、でもよく見ると触角があります。やっぱりカタツムリなんですね。

――味はどうでしょう。

木幡 独特の香りはありますが……。

新井 美味しい。下手な貝よりも。

宇田川 何の違和感もないですね。むしろ貝がダメな方でも大丈夫かも。

高頭 日本人は貝を食べ慣れている民族ですし、そういった部分で親しみがあるのかもしれないですね。エスカルゴは茹でるんですか?

津原 実は下処理にけっこうな時間がかかっています。生きたままのポマティアを水から茹で、殻から出します。ワタなどを切除したのち、粗塩でもみ洗いをしてぬめりを取ってあります。

定番のブルギニョンと
禁断(!?)のエスカルゴ軍艦

――続いては定番のブルギニョンです。

津原 専用のトングで取って、楊枝で身を引っぱり出してください。

高頭 やっぱりこれが一般のエスカルゴのイメージですよね。

宇田川 でも僕の中ではそれが……変わりつつあります。

木幡 出てきた〜。なんだか楽しいですね。

津原 お行儀を考えずに、バゲットの上に乗せてかぶりついちゃってください。

――お味はいかがですか?

新井 美味しい。バゲットと一緒にいくらでも食べられます。

宇田川 つるんとした食感も面白いですね。

高頭 「スパイラル」に飲みに行きたくなります。

木幡 あのお店、いかにも吉祥寺にありそうで、ピッタリとイメージできます。ハモニカ横丁などの描写もリアルで、毎日吉祥寺に通っている身としては嬉しいです。


定番のブルギニョン

――続いてはエスカルゴ軍艦です。

津原 酢の物もですが、これもフランス人が見たら「食えるのか?」と怒り出すかもしれません。

新井 でも、これも違和感はないですね。

津原 シャリにバターライスを使っています。

木幡 相性がいいですね。新しい寿司ネタみたい。

高頭 回転寿司のチェーンとコラボしてもいいくらい。

津原 さっきの酢の物もそうですが、海苔との相性もいいですし、和食として完成度が高いと思います。


エスカルゴ軍艦

――今作では、例えば居酒屋で卵焼きを食べて「卵。卵というご馳走を、長らく忘れていた自分に気付く」といった一文があるように、食べ物についての描写が印象的です。どのような点を意識したのでしょうか。

津原 これは表現として当然なのですが、美味しいものを食べて「美味しい」と書いてしまってはダメですよね。言ってみれば、食べ物の表現とは味わうという行為をデフォルメするということです。そんな食材があるかはわかりませんが、走りたくなるようなものを食べたら「走りたくなった」と書くより、実際に人物を走らせてしまったほうがいい。

――今回はエスカルゴという特殊な食材を描かれていましたが、難しかった点はありますか?

津原 読んだ方がイメージしやすいように「普段、食べているものと比べてどうなの?」という尺度が欲しかった。油揚げにチーズを挟んで焼いた「チーズキツネ」や卵焼きはその対比として書いたんです。

新井 エスカルゴ以外の料理も美味しそうで、それぞれ印象的でした。

高頭 自分でもやってみようと思えるようなメニューが多くて楽しかったです。チーズキツネは実際にやろうと思っています。


チーズキツネ

宇田川 ひょっとして「普段食べているものとの対比」の延長線上に、作品に登場する、うどんとエスカルゴを合わせた“ウドネスカルゴ”もあるんですか?

木幡 主人公とヒロインのご当地うどんのエピソード、面白かったです。

――主人公は香川県出身で実家が讃岐うどん屋。なのに、恋に落ちる相手があろうことか伊勢うどん屋の娘なんですよね。

新井 うどん界のロミオとジュリエットですね。稲庭うどん屋の御曹司まで絡んでくる彼らの恋愛模様にも、どきどきさせられました。

エスカルゴ×伊勢うどん=
ウドネスカルゴ

――ちょうどシメに、その“ウドネスカルゴ”がやってきました。

木幡 食べやすくて美味しいです。

高頭 シメにちょうどいい!

宇田川 伊勢うどんにいい意味で歯ごたえがないので、エスカルゴとの相性がいいんですね。

新井 エスカルゴがもっとゴロゴロ入っていても嬉しいかも。


ウドネスカルゴ(エスカルゴのせ伊勢うどん)

――これで全メニューが終了しました。世界でもここだけの「スパイラルのエスカルゴコース」はいかがでしたか?

木幡 実はこの企画を聞いたとき、「カタツムリでしょ? どうしよう」と思っていたんです。ぜんぶ美味しかった。満足です。

宇田川 実際に食べてみて、『エスカルゴ兄弟』を読み返してみたくなりました。

高頭 これらのメニューは津原さんが考案したのですか?

津原 料理の上手な大学時代からの友人がいて、彼と一緒にあらゆる料理を試した結果ですね。軍艦なんかは彼のアイデアで、バターライスという発想も僕のものではありません。

木幡 どれも美味しかったです。

宇田川 ごちそうさまでした。

津原 ゲテモノ扱いされなくて良かった。ポマティアの殻をお土産に用意したので、迷惑かもしれませんがお持ちください。

新井 店で飾っていいですか? これを使ってPOPを作ります。

津原 是非お願いします。今日はありがとうございました。

「メイキング・オブ・『エスカルゴ兄弟』
――津原泰水 ロングインタビュー1(全3回)」
「メイキング・オブ・『エスカルゴ兄弟』
――津原泰水 ロングインタビュー2(全3回)」

 2016/11/29 UP

「メイキング・オブ・『エスカルゴ兄弟』
――津原泰水 ロングインタビュー3(全3回)」
『エスカルゴ兄弟』特製フリーペーパー
書店で配布したフリーペーパーを特別に公開!

書籍情報

  • エスカルゴ兄弟著:津原泰水
  • 2016年8月5日(金) 発売
  • ※地域によって発売日が前後する場合があります。
  • ISBN 978-4-04-103252-7-C0093
    定価:本体1,650円+税
    四六判並製
  • ◎電子限定特典◎
  • ◆著者による直筆サイン&メッセージを収録!
エスカルゴ兄弟

プロフィール

津原泰水(つはら・やすみ)

1964年、広島市生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。89年、少女小説作家としてデビュー。
97年、現名義で『妖都』を上梓。以降、幅広いジャンルで執筆を続け、2006年に発表した『ブラバン』がベストセラーになる。12年『11』で第2回Twitter文学賞国内部門第1位に選出され、14年には同作品集収録の「五色の舟」がSFマガジン「オールタイム・ベストSF」国内短篇部門で1位に選ばれた。また、同作品は近藤ようこ氏によって漫画化され、第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞を受賞した。
その他の著作に「幽明志怪」三部作、「ルピナス探偵団」「たまさか人形堂」シリーズ、『綺譚集』『赤い竪琴』『バレエ・メカニック』『玻璃玉の耳輪』『クロニクル・アラウンド・ザ・クロック』『ヒッキーヒッキーシェイク』など多数。

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